■「夢に息子が」

 だが、首に縄をかけられた死刑囚が立ついすを自ら蹴り外して刑を執行する代わりに(イランではイスラム法の下で遺族にこの権利が認められている)、アリネジャドさんは、死刑囚の頬を1度だけひっぱたき、その罪を許した。

 地元紙によると、アリネジャドさんは「夢に私の息子が現れ、自分は安らかで良い場所にいると私に言った」「それからは親族が全員、私の母でさえも、犯人を許すよう圧力をかけてきた」と話している。「あの平手打ちは、復讐と許しの中間にあるもの」「彼を許したことで、私の心は楽になった」という。

 バラル死刑囚については先月、映画監督のモスタファ・キアエイ(Mostafa Kiaei)氏やテレビ司会者などの著名人が共同で、遺族に免罪を求める運動を立ち上げていた。同監督の作品の特別上映会を行い、そのチケット販売から血の賠償金を工面していた。同監督によると、被害者の父親は血の賠償金を使って亡き息子の名前をつけたジムを開業したいと話しているという。

 この運動が免罪につながったと思うかと質問された同監督は、「イランにはNGOが少ないことを考えると、映画やテレビ番組といった『ツール』を持つ自分たちのような者は、人々に良い行いをするよう呼び掛けることができると思う」と述べている。(c)AFP/Arthur MacMillan