【4月16日 AFP】彼らは幼虫が大好物で、横になって眠るときは大きないびきをかき、そしてなぜかは分からないが、枯れた倒木の幹をひっくり返すことに大きな楽しみを見いだしている──。

 これらは、減少傾向にある欧州のヒグマの日常をとらえた映像から得られた洞察のほんの一部。この革新的なプロジェクトで撮影された映像は、フランス南西部トゥールーズ(Toulouse)にある自然史博物館(Natural History Museum)で行われている展示の一部として上映されている。

 同博物館は、スロベニア当局と野生動物映画制作者のミシェル・トネリ(Michel Tonelli)氏の協力を得て、スロベニアの高原地方に生息している一頭の雌グマの日常活動を詳細に記録した映像を撮影することに成功した。撮影には、雌グマに取り付けた全地球測位システム(GPS)対応の首輪に装着したカメラが用いられた。

 欧州のヒグマを対象として行われた試みは今回が初めて。映像は、ヒグマの生態に関する驚くべき新発見をもたらすものではないが、自然界で活動している様子の観察が困難な野生動物の視点から見た世界を垣間見せている。

 自然史博物館の動物学者、アンリ・カップ(Henri Cap)氏は「これにより、ヒグマのブラックボックス(活動記録計)の中身を知り、ヒグマ自身の活動領域に立ち入ることが可能になる」と話す。

「例えば、過去にその場所で不快な経験をしたことがあるのが明白にわかる丸太小屋のそばを通りかかると、ヒグマはきびすを返してすぐにその場から立ち去ってしまう」

「ヒグマが人間への恐れを抱いているのは、見ていて気持ちの良いものではないが、これは理性的に思考する能力を示すものでもある。意外に思う人もいるかもしれないが、クマが極めて利口な動物だということは、クマに携わる人間なら誰もが知っている事実だ」

 映像には、トゥールーズのローマ時代の地名にちなんで「トローサ(Tolosa)」と名付けられたこのヒグマが、ナナカマドの木を揺らして実を落としている様子や、餌の小さな幼虫を集める際に幼虫を極めて繊細に取り扱う様子などが収められている。

 推定年齢約5歳のトローサには、枯れ木をひっくり返すことを好む傾向がみられた。遊びでしているのか、あるいは餌となる幼虫の発生を促すため、昆虫にとっての理想的な環境を提供する目的で行っているのだろうか──この行為については科学的に解明されていない。(c)AFP