【4月13日 AFP】パリ(Paris)の動物園が6年かけて大改修され、12日に再び一般開園された。従来の都市型動物園のイメージを拭い去り、人々の野生生物の見方を変えることを目指した再出発になる。

 一風変わった、物珍しい、あるいはどう猛な動物を眺める場所だったかつての動物園は姿を消し、代わりにより広くて密度が低く、より自然に近い形を再現した枠の中で、それぞれの唯一無二の姿を観賞できる環境に生まれ変わった。

 1億7000万ユーロ(約240億円)を費やして大改修されたバンセンヌ動物園(Vincennes Zoo)は、可能な限り自然でストレスのない環境を用意したとしている。

 パリの東端にあるバンセンヌ公園(Vincennes Park)内のこの動物園は、1934年に開園。20世紀の大半の期間を通じて市民から広く愛されてきた。オープンから70年が経過し、老朽化が目につくようになった2008年にいったん閉園され、長期休暇が認められた動物たちは他の動物園へ搬送された。リニューアル後にも数千の動物が展示されるが、その数は開園当初に比べると約半分だという。

■ゾウやクマはいない

 同動物園に勤務する獣医師は、「動物園といえば誰もが思い浮かべる、ライオンやキリン、サイといった写真映えする人気者に加えて、アリクイやクズリのような、辛抱強く探さないと見つかりにくい動物もいる」と話している。

 一方で、ゾウやクマの展示は取りやめた。広々とした空間を好む動物たちを、都市型動物園のおりの中に閉じ込めておくのはかわいそうだという判断だ。

 展示される鳥類74種、哺乳類42種、爬虫(はちゅう)類21種、両生類17種、魚類15種は全て、囲いの中で飼育されてきた。シロサイやジャガー、オリックス(南東アフリカに分布するウシ科の動物)などの多くの動物が絶滅の危機にひんしており、遺伝的多様性の保全のため他の動物園と行き来させている。

「人類と動物の共生関係」を専門とする地理学者のジャン・エステバネス(Jean Estebanez)氏は、今回の大改修は、動物は資源としてみるのではなく、人類と共存する種とみなすべきだという、自然保護活動家らの約半世紀前にさかのぼる認識の変化を反映したものだとしている。(c)AFP/Isabelle TOUSSAINT