■「罪の意識は感じなかった」

 かつてルワンダでは、異なる民族同士も比較的平和に共存し、民族が異なる男女間の結婚も珍しくはなかった。しかしカジグウェモさんによると、「政府がフツ(Hutu)人に対し、ツチ(Tutsis)人が再びフツ人を支配しようともくろんでいるため、ツチ人を殺して財産を奪わなければならないと教えていた」という。「政府はわれわれに銃を与え、殺し方を教えた」が、カジグウェモさんの一団は銃ではなく「なたとやりを使って」7人を殺害した。

「罪の意識は感じなかった。政府の期待に沿ったのだから誇りに思った。だからもう一度やった」。「殺しがうまい者」もいたというカジグウェモさんの一団は、2度目の襲撃でムカガサナさんの家族2人をおので斬り殺した。

 ルワンダ大虐殺の後、従来の裁判所では対応しきれず、伝統的な地域共同体での「ガチャチャ(Gacaca)」裁判が開かれ、10年以上かけて200万人が裁きを受けた。カジグウェモさんもその1人で、殺人行為を認めて謝罪したため減刑された。

「謝る前は心が落ち着かなかった。ふとした時に自分が殺した人たちの顔が目の前に浮かぶこともあった。でも今は見えなくなった」