【4月1日 AFP】スペインの教会に展示されていた古い杯が「聖杯」であると複数の歴史研究家が指摘したことから見物客がこの教会に詰めかけ、杯が一時的に撤去される事態になっている──。

 見物客が詰めかけているのは、スペイン北西部レオン(Leon)にあるサン・イシドロ(San Isidro)教会だ。

 レオン大学(Leon University)で中世史の講師を務めるマルガリータ・トレス(Margarita Torres)氏と美術史家のホセマヌエル・オルテガ・デルリオ(Jose Manuel Ortega del Rio)氏は先週、この古い杯こそイエス・キリスト(Jesus Christ)が最後の晩餐で使用した伝説の聖杯と主張する著書「Kings of the Grail(仮訳:聖杯の王たち)」を出版した。

 教会の展示施設を取り仕切るラケル・ハエン(Raquel Jaen)氏によると、もともと展示されていた場所が狭く、大勢の観覧者に対応できなかったため、先月28日に杯は別の場所に移されたという。

 めのう、金、オニキスで作られた杯は2つのゴブレットが上下につながった形をしており、宝石が散りばめられている。この杯はこれまで、レオンの王、フェルナンド1世(Fernando I、1037~1065年在位)の娘、インファンタ・ドニャ・ウラカ(Infanta Dona Urraca)のものと考えられてきた。

 トレス氏とデルリオ氏は2011年、エジプトのカイロ(Cairo)にあるアズハル大学(Al-Azhar University)で、羊皮紙に書かれた文書複数枚を発見し、以降3年間にわたって研究を行った。研究の結果、めのう製で一部が欠けたこの杯の上部と羊皮紙にあった描写とが一致したことから「聖杯」と特定したという。

 聖杯とされる杯は、欧州だけでも200個ほどあると認める両氏。著書では、それらのうち有名なものをいくつか取り上げ、その真贋を検証している。(c)AFP