【3月20日 AFP】8日に239人の乗客乗員を乗せマレーシアのクアラルンプール(Kuala Lumpur)から中国の北京(Beijing)に向かう途中で消息を絶ったマレーシア航空(Malaysia Airlines)MH370便の行方が依然分からないことから、事故に注目する一般の人々がこの「情報空白」を埋めようとするなど、次々と「新説」が浮上し、もっともらしいものからとっぴなものまで種々飛び交っている。

 こういった仮説の中には、ハリウッドの脚本家に創作意欲を失わせるほどの仮説も存在するが、航空界の最大の謎の一つとなった今回の事故についての確固たる事実がないために、絶対にあり得ないと排除できるものの方が少ないという状況が生まれている。

■説その1 緊急着陸を試みた

 ソーシャルメディアで爆発的に広がっている新説の1つは、操縦室で火事といった緊急事態が発生してMH370便が通信不能となり、操縦士らがマレーシアの近隣の飛行場に着陸しようと英雄的な試みに踏み切ったとするものだ。元操縦士らによると、この説ならマレーシア当局がいうインド洋(Indian Ocean)に向かう西方面への「意図的な」針路変更の説明がつくという。

■説その2 ハイジャックされアフリカか北朝鮮へ

 動機も不明のまま、世界中の数百万人のソーシャルメディア利用者がそれぞれに想像をふくらます中、米メディア王ルパート・マードック(Rupert Murdoch)氏は、同機が何者かにハイジャックされ、アフリカかパキスタン、または北朝鮮に向かったのではないかという初期の憶測をさらに広げて、マイクロブログのツイッター(Twitter)に「もしかしたら墜落したのではなく盗まれ、巧みに隠されているのでは。もしかしたらパキスタン北部に、(ウサマ・)ビンラディン(Osama Bin Laden)のように」と投稿した。

 しかし、大型ジェット機が複数の国の領空を通過してレーダーに全く検知されない可能性は非常に低いことから、これに類似する説は概して却下されている。

■説3と4 レーダーの「影」に隠れて移動、隕石(いんせき)と衝突

 この他、マレーシア上空を北へ向かっていたシンガポール航空(Singapore Airlines)機のすぐそばを飛行するよう何者かが針路を変え、レーダーの「影」に隠れようとしたのではないか、というハリウッド映画ばりの説の提唱者らもいる。また、乗客の3分の2の出身国である中国のソーシャルメディア上では、隕石にぶつかって消滅したのではという説が流れている。

■説5 モルディブ上空を低空飛行

 またインド洋の小さな島国モルディブの警察当局は18日、不明機が姿を消した日に同機に似た特徴のある「低空飛行する大型ジェット機」を見たという複数の住民からの目撃情報を調査していると発表した。しかしモルディブは、マレーシア当局が衛星情報に基づき不明機が飛行した可能性があるとみている広大な範囲よりも、さらに遠く離れている。

 なお、当初広まったジェット機がマレーシア東部で炎上していたとする報道については、誤りであったことが後に確認されている。

■説6 機長と副操縦士の手際を疑問視

 同機の進路変更が手際よく行われたとみられることから、ザハリ・アフマド・シャー(Zaharie Ahmad Shah)機長とファリク・アブドル・ハミド(Fariq Abdul Hamid)副操縦士の関与の可能性にも注目が集まっている。しかし、2人については、過激な思想を示すものは見つかっていない。

 業界誌「フライトインターナショナル(Flight International)」で航空輸送部門の編集者を務めるデビッド・カミンスキモロー(David Kaminski-Morrow)氏は、同機が発見されるまで、陰謀論や憶測が相次ぎ謎が深まるのは避けられないという見方を示し、「決定的なものが何もない。全て非常に曖昧なので、調査が進んでいないものはまだ何でも可能性がある」と指摘している。(c)AFP/Dan Martin