【3月20日 AFP】消息を絶ったマレーシア航空(Malaysia Airlines)MH370便のザハリ・アフマド・シャー(Zaharie Ahmad Shah)機長が自宅に所有していたフライトシミュレーターから、データの一部が消去されていたことが分かった。マレーシア政府が19日、発表した。データの削除は、同便が消息を絶つ約1か月前に行われたもので、現在、復元作業が進められているという。

 ヒシャムディン・フセイン(Hishammuddin Hussein)運輸相代理は記者会見で、「フライトシミュレーターのデータの一部が消去されていた。捜査当局が現在、データの回収作業を進めている」と述べた。ただし、機長の違法行為を裏付ける証拠は確認されていないと強調。慎重な判断が必要だとの見解を示している。

 33年の経験を持つベテラン操縦士のザハリ機長は、同僚らの間で高い評価を得ていたが、MH370便の通信装置が意図的に停止され、優れた技能を持つ操縦士によって針路を変更されたとの見解を捜査当局が示したことを受け、マレーシア当局は、機長の自宅からフライトシミュレーターを押収。機長は以降、疑惑の渦中に置かれている。

■FBIに協力要請

 米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は19日、匿名の米捜査当局高官の話として、マレーシア当局がフライトシミュレーターのデータ回収作業について、米連邦捜査局(FBI)に支援を要請したと報じた。クアラルンプール(Kuala Lumpur)に駐在するFBI捜査員が、シミュレーターのハードドライブのコピーを作成し、分析のために保存データを米国に送る見込みだという。

 匿名を条件にAFPの取材に応じた米当局者も、マレーシア当局がFBIに協力を要請したことを認めた。

■会見場に中国人家族らが殺到

 同機の捜索が12日目を迎えた19日、厳戒体制の下で連日行われているマレーシア当局の記者会見場には、怒りに満ちた中国人乗客らの親族たちが押し掛けた。

「家族を返せ」と書いた横断幕を手に抗議の声を上げた親族らは、マレーシア当局が情報を公開せず、同機を発見するための十分な対応を怠っていると非難した。(c)AFP