【3月13日 AFP】これまで見つかった中で最も重要な「肥満遺伝子」を特定したとする研究論文が、12日に英科学誌ネイチャー(Nature)で発表された。増え続ける肥満に対抗する薬剤の開発が可能になるかもしれない。

 この「IRX3」遺伝子を持たないように繁殖させられたマウスは、同遺伝子を持つマウスと比べて体重が3分の1近く軽かったという。マウスにおけるIRX3と同等の遺伝子はヒトにも存在しており、この遺伝子の機能を調べることで、ある人が別の人よりも肥満になりやすい傾向があることを説明できるかもしれない。

 研究チームを率いた米シカゴ大学(University of Chicago)のマルセロ・ノブレガ(Marcelo Nobrega)氏は「われわれのデータは、IRX3が体重を制御し、身体組成を調整していることを強く示唆している」と述べた。IRX3は代謝を調整することでこれらを実現しているとみられる。

 これまでの研究では、「FTO」と呼ばれる遺伝子の変異と体脂肪余剰との間に関連性が発見されていた。だがFTOの変異がFTOの機能を変化させていることを、研究者は証明できていなかった。

「彼らは間違った遺伝子を見ていたのだ」とノブレガ氏はAFPに説明した。研究によると、FTOの変異は、FTO遺伝子自体に作用するのではなく、全く別の遺伝子IRX3の反応を誘発し、脳内にIRX3タンパク質が過剰に生産されていたのだ。

 これが、代謝と食欲の調整をつかさどる脳の視床下部に影響を及ぼしたとみられる。「変異はFTOで起きるが、その変異はFTOではなくIRX3の機能に影響を及ぼしていた」とノブレガ氏は語った。

 研究チームは、マウスとゼブラフィッシュの胚、成体のマウスの脳、ヒトの脳細胞を含む細胞を用いて、IRX3とFTOの相互作用を分析した。マウスの場合、IRX3を持たないマウスは、IRX3を持っているマウスと同量の食事と運動をしたにもかかわらず、体重が約30%軽かった。

 ノブレガ氏の最終的な目標は、IRX3によってどの細胞機能がいかに変化しているかを特定することだという。それにより、肥満を生じさせる効果を阻害する薬剤を開発できるようになるかもしれない。

 世界保健機関(World Health OrganizationWHO)によると、世界の肥満人口は、1980年から2008年にかけほぼ倍増した。2008年には成人の3分の1以上にあたる14億人が過体重で、10人に1人以上のおよそ5億人が肥満だった。毎年少なくとも成人280万人が過体重または肥満の結果として死亡している。(c)AFP/Mariette LE ROUX