【3月12日 AFP】(写真追加)火山から放出される蒸気と熱のおかげで、一部の動植物種は過去の氷河期を生き抜くことができたとする研究論文が、11日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。気候変動研究の一助となることが期待される。

 氷河に覆われた地域で、一部の生物種だけが孤立した状態でどのようにして繁栄したかについては長年の謎となっていた。オーストラリア国立大学(Australian National University)のケリドウェン・フレイザー(Ceridwen Fraser)氏率いる国際研究チームは、今回の分析では長い寒冷期に火山が生物のオアシスとして機能していたことを示しており、この謎を解明するためのヒントになるとしている。

 フレイザー氏は「火山の蒸気で氷が溶け、氷河の下に巨大な氷穴ができる。氷穴の中は外より気温が数十度高くなる。氷穴と暖かく湿潤な野原は、氷河期に生物種が集まって生息するには絶好の場所だっただろう」と述べ、「気候変動の加速に対処しようとしている現在、過去の気候変動の影響を詳細に調べることから多くを学ぶことができる」と続けた。

 研究チームは、これまでに研究者数百人が数十年にわたって収集した南極のコケ・地衣類と昆虫類に関する記録数万件を調べた結果、火山に近いところでは生物種の数が多く、遠ざかるほど少なくなることを発見した。

 今回の研究は南極に関するものだが、地球上に氷のない陸地がほとんど、あるいは全くなかったと考えられている時代に、他の極寒地域で生物種が過去の氷河期をどのようにして生き延びたかを科学者らが理解する上で大きなヒントになると考えられる。