【3月11日 AFP】焼け付く真昼の太陽の下、小麦のような黄金色の穀物テフの山の上で牛の群れが輪になっている。エチオピアで何世紀と受け継がれてきた脱穀方法だ。

 テフのほとんどはアフリカ大陸東部の「アフリカの角(Horn of Africa)」と呼ばれる地域で生産されている。テフはエチオピア伝統の極めて重要な主食だが今、国外でも、小麦に代わる栄養価の高い無グルテン食を求める健康愛好家の間で、熱い注目を集めている。

 エチオピア以外では今のところまだあまり知られていないが、現在世界中で「スーパーフード」と呼ばれているキヌアに取って代わる穀物だとも言われている。

 ミネラル分が豊富で高タンパクのテフは、糖尿病患者に理想的な徐放性食品で、またグルテン不耐症やセリアック病の人にも良いとされている。

「テフは、食品に求められる側面としてますます重要性を増しているグルテン・フリーであるだけでなく、非常に栄養価が高い。多くの人がテフをスーパーフードとみなしている」とエチオピア農業改革庁(Agricultural Transformation Agency)のハリド・ボンバ(Khalid Bomba)最高執行責任者は太鼓判を押す。

 エチオピアではテフは、煮込んだ肉や野菜を乗せて食べるインジェラという柔らかい発酵パンケーキを作るために使われる。ほとんど宗教のように1日3度、このインジェラを主食とする人が多い。

 テフはまた抵抗力の強い作物で、海水位から高度3000メートルまでで栽培が可能だ。干ばつにも洪水にも強く、エチオピアの乾燥した高原地方にもってこいだ。

 こうした様々な長所にもかかわらず、同国の650万人のテフ作農民にとって手に入る種子の品種や肥料、近代的な農業機械が限られた状況では、増えている外国からの需要はおろか、国内需要に応えるのも精一杯となっている。

 ボリビアの主食キヌアが世界的人気となり、国民のほとんどが入手できなくなってしまった落とし穴を避けるため、現在、テフは輸出禁止となっている。(c)AFP/Jenny VAUGHAN