【2月25日 AFP】スウェーデンの農家や狩猟者たちは、オオカミ狩り禁止令を非難し、市民的不服従も辞さない構えだ。彼らにとってオオカミは人々の生活を脅かす存在だからだ。

 南部の街カールスタード(Karlstad)郊外で小さな牧羊場と食肉処理場を営むエルザ・ルンド・マグヌッセンさんは「オオカミと共存はできると思うが、今ほどたくさんになるとそうはいかない。人間に近づき過ぎている」とAFPに語った。「1週間前にもすぐそこで、オオカミがヘラジカの子どもを殺したばかり」と彼女は首を振った。「オオカミが自分の家の敷地にいつでも侵入して来ると分かっていたら、生活がまったく変わってしまう。飼い犬を庭で遊ばせもしないし、みんな、森を歩くときはライフルを持ち歩いたほうがいいと言っている」

 オオカミ狩りはスウェーデンで微妙な問題だ。他の欧州諸国では、肉食動物は欧州連合(EU)の保護法の下で近年再び保護対象になっている。

 欧州委員会(European Commission)は昨年、スウェーデンのオオカミ間引き政策を止めるよう訴訟を起こし圧力をかけた。今年1月にはスウェーデンの裁判所が、環境保護団体によるEU法違反の主張を受け入れ、計画されていた30頭の間引きを禁止。現在は家畜が被害に遭ったり、明らかな脅威が認められたときの「防御的狩猟」しか許されていない。この判決は、スウェーデン政府が現在400頭余りいるオオカミを270頭にまで減らすという新政策を発表したわずか1か月後に下された。

 新政策を発表した報告書で、レーナ・エーク(Lena Ek)環境相は「スウェーデンにはかつてこれほど多くの大型肉食動物がいたことはなかった」と述べている。オオカミの数は増加傾向にあり、「肉食動物が集中している地域で人々が暮らし働いていくために」頭数を制限していく必要があると訴えた。