【2月25日 AFP】南アフリカにある教会で行われる宗教儀式では、ズールー(Zulu)戦士の盾を抱え、ヒョウ皮をまとった信者たちが、催眠にかかったように踊り、神に祈りをささげげる──。この教会での儀式では、伝統的にヒョウ皮が欠かせないものとなっているが、保護団体と教会の取り決めにより、徐々に人工皮革が使われるようになってきたという。

 同国のクワズール・ナタール(KwaZulu-Natal)州で100年前に創設された「ナザレ・バプティスト・チャーチ(Nazareth Baptist Church)」では、キリスト教とズールーの伝統が結びいて誕生した「Shembe」が信仰されている。

 ここでは、ヒョウ皮が信仰の誇りと気高さの象徴として儀式の際に用いられてきた。だが、ヒョウの個体数が密猟と生息地の減少によって脅かされていることから保護団体が批判を強め、教会の指導者も本物ではなく、低価格の皮革を信者らに勧めている。

 教会の広報担当者Lizwi Ncwaneさんは、AFPの取材に対し、「ヒョウ皮はパワーを表すもので重要視されてきた。だが、最近では偽の皮も使っている」と話した。

 毎年1月、この教会では特別の儀式が行われて大勢の信者が集まる。この儀式では、年配の信者が太鼓と管楽器の音に合わせて踊る。Ncwaneさんによると、「踊りと祈りで神を敬う」のだという。参加者は、サルの尾の腰巻きやヒョウ皮のベルト、ダチョウの羽でできたかぶり物など、儀式用の衣装を身に付けなければならないが、特に重要なのが胸を覆うヒョウ皮だ。

 鉱山労働者のSphiwe Celeさんはヒョウ皮について「王であることを表す」と説明し、あえて本物のヒョウ皮を4500ランド(約4万3000円)で手に入れたという。平均的な南アフリカ人にとっては高額だ。

 米保護団体「Panthera」のGuy Balmeさんは南アフリカでのこの行為を「この世で最も分かりやすい野生動物の密輸だ」と非難する。ヒョウ皮の多くは南アフリカやモザンビーク、ジンバブエ、マラウイで密猟されたものとされ、保護団体のLandmarks Foundationの責任者、ブール・スマッツ(Bool Smuts)さんによると、南アフリカに生息するヒョウは国際自然保護連合(International Union for the Conservation of NatureIUCN)による、絶滅の恐れのある生物種のレッドリストで「Near-Threatened(準絶滅危惧)」に分類されており、その個体数は5000~7000頭だという。

 密猟を食い止めるため、Pantheraはここ数年、人工ヒョウ皮革の開発に取り組み、教会にもその使用を薦めてきた。お金にあまり余裕のない信者たちの中には、牛やインパラの皮にヒョウ柄を描き入れたものを使っている人もいるという。

 皮革は主に中国で作られた製品を取り寄せ、南アフリカのダーバン(Durban)で完成品に仕上げられている。Pantheraは2014年半ばまでに6000の皮革を無償提供する予定だ。(c)AFP/Jean LIOU