【2月5日 AFP】競売大手のクリスティーズ(Christie's)は4日、同日と翌5日に英ロンドン(London)で予定されていたスペインの巨匠ジョアン・ミロ(Joan Miro)の絵画85作品の競売を中止すると発表した。作品を所有するポルトガル政府と売却に反対する同国の美術愛好家らの間で訴訟になっていることを受けた措置。

 これらの作品は2008年にポルトガル商業銀行(BPN)が国有化された際に国有財産になり、財政難に苦しむ同国政府は売却によって資金を得る意向だったが、国内の美術愛好家から売却に強く反対する声が上がっていた。

 競売の差し止めを求めて野党・社会党が起こしていた訴えは4日、同国の裁判所で退けられた。しかしその後、競売開始予定時刻の数時間前になってクリスティーズは、「買い手に対し正当な所有権を問題なく移転させることを保証する責任を負っている」が、問題の作品群には「司法上の不確定要素」が重なっていることを理由に競売を中止すると発表した。

 同社は、今回オークションに掛けられる予定だった作品群をこれまで市場に出たミロ作品群の中で最大かつ最重要コレクションの1つと位置付けていた。ミロの最も有名な作品の1つで予想落札価格が400万~700万ポンド(約6億6000万~11億6000万円)の「女と鳥」も含まれており、落札総額は3600万ユーロ(約49億円)を超えるとみられていた。

 売却に反対している社会党議員は先月、「美術史におけるジョアン・ミロの重要性には疑う余地がなく、ポルトガル国内に存在するミロや同じ時代のミロ以外の画家のコレクションで、これほどの芸術的価値を持つものは他にない」と訴えていたが、ポルトガル政府は、財政が逼迫(ひっぱく)した状況では芸術作品の優先順位は下がるという見解を示していた。(c)AFP/Katy Lee