【2月3日 AFP】2010年に米南部ルイジアナ(Louisiana)州沖のメキシコ湾(Gulf of Mexico)で発生した英エネルギー大手BPの原油流出事故から1年後の調査で、同湾内のバンドウイルカに、歯の欠損や肺疾患、ホルモンレベルの異常などがみられたことが、米海洋大気局(National Oceanic and Atmospheric AdministrationNOAA)などの研究チームによって報告された。

 昨年12月、米国化学会機関誌「エンバイロメンタル・サイエンス・アンド・テクノロジー(Environmental Science and Technology、環境科学と技術)」に同チームが発表したのは、2010年4月に爆発し、約490万バレルの原油をメキシコ湾に流出させたBPの石油掘削施設「ディープウォーター・ホライゾン(Deepwater Horizon)」の事故後のイルカの健康に関する世界初の大規模な調査をまとめた論文。

 米史上最悪の原油流出が始まってから1年と4か月後に当たる2011年8月に調査対象となったイルカ32頭の半数が、重病または死の危険に直面していた。論文の主執筆者、NOAAのロリ・シュワック(Lori Schwacke)氏は「非常に重い病気の個体がこれほど高い割合で発生しているケースは今まで見たことがない」と話す。

 調査対象の野生のバンドウイルカは、メキシコ湾のルイジアナ州沖にあるバラタリア湾(Barataria Bay)で捕獲し、短期間で健康検査を行った後に海に戻した。検査結果は、フロリダ(Florida)州沖にあるサラソタ湾(Sarasota Bay)のバンドウイルカ27頭と比較された。サラソタ湾はバラタリア湾と同じくメキシコ湾内に位置するが、原油流出の影響を受けていない。

 この調査の結果、バラタリア湾のイルカは、動物のストレス反応に不可欠な副腎ホルモンのレベルが著しく低かった。中度から重度の肺疾患は、サラソタ湾のイルカに比べて5倍も多くみられた。またバラタリア湾のイルカのうち3頭はほぼすべての歯を失っており、さらに通常の歯の数(78~106本)の半数しか残っていないイルカも3頭いた。この他、肺炎、貧血、低血糖、肝酵素の上昇などの症状もみられ、死んだ胎児を胎内に残したまま泳いでいた雌のイルカも報告された。