【1月28日 AFP】オランダ・ハーグ(Hague)の国際司法裁判所(International Court of JusticeICJ)は27日、南米のペルーとチリが両国沖の太平洋海域の領有権をめぐり争っていた訴訟で、現在チリの管理下にある海域の一部をペルーのものと認める判決を言い渡した。

 6年におよび続いていた訴訟の判決でICJは、沿岸から80カイリまでの沖合について、チリ側が主張する境界線を認めた一方、その先の海域の大部分をペルー側のものとする判断を示した。

 ペルー政府はICJの決定に満足感を示したが、アナリストらによると、漁師たちが40カイリを超える沖合まで漁に出ることはまれで、判決はチリにとって大きな痛手にならないとみられる。ペルー南部の漁師たちも「地域への恩恵は皆無だ」と、判決への不満を示している。

 発端を「太平洋戦争(War of the Pacific)」(1879~83年)までさかのぼるこの海域紛争では、ペルー側が2008年、チリが50年代初めから主張してきた太平洋上の境界線は不明確であり、不当占有に当たるとして、ICJにチリを提訴。チリの管轄下にあった漁業資源豊かな3万8000平方キロメートルの海域と、チリ政府が「公海」と分類する2万7000平方キロの海域の領有権を主張していた。

 ペルーの訴えに対しICJの判事らは27日、チリが主張する境界線の沖合80カイリの地点から、南西に向かってチリ沖合ほぼ200カイリまで線を引き、その北側の海域をペルーのものと認めた。

 ICJのペテル・トムカ(Peter Tomka)判事はチリおよびペルー代表団を前に、「地理上の明確な座標を断定はせずに、両国間の海上における境界を定義づけた」と説明し、裁定を「公平な解決」と評した。

 ペルーとチリは国境をめぐる紛争で、たびたび緊張関係に陥ってきた。両国間の境界は、19世紀の太平洋戦争によって再画定され、ペルーは領土の25%を失った。またボリビアもこの戦争により、沿岸部がチリ領となり内陸国となった。(c)AFP/Jan HENNOP