【1月21日 AFP】理論上で全宇宙を結び付ける「宇宙のクモの巣」を形成する存在とされてきたガスのフィラメント(糸状)構造を、初めて実際に観測したとの研究論文が19日、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

 米カリフォルニア大学サンタクルーズ校(University of California, Santa Cruz)などの研究チームは、宇宙で最も明るい天体であるクエーサー(準恒星状天体)が発する強力なエネルギー放射を利用してこの観測を行った。超大質量ブラックホールによって生み出されるこのエネルギーは、巨大なフィラメント構造の一部を照らす、いわば「宇宙の懐中電灯」として機能している。

 宇宙論では、銀河間に存在する物質は、宇宙のクモの巣として知られるフィラメント構造を形成して分布していると考えられている。

 宇宙にある原子の大部分は、ビッグバン(Big Bang)後に残された水素として、この網目構造内に存在していると考えられており、銀河は網の結び目に当たる部分に形成されたと考えられている。

 研究チームは、ハワイ(Hawaii)のケック天文台(Keck Observatory)で、フィラメントの交差部分にある深宇宙の巨大ガス雲を対象とした観測を行った。

 クエーサーは、銀河中心にある超大質量ブラックホールに宇宙物質が落下することで生成されるエネルギーを放射しており、チームはコンピューターの光フィルターを用いて、この放射で明るく照らされたガス雲の研究を可能にした。

 カリフォルニア大サンタクルーズ校の研究者、セバスティアーノ・カンタルーポ(Sebastiano Cantalupo)氏は「今回のケースでラッキーだったのは、懐中電灯の光が宇宙クモの巣の方を向いており、そのガスの一部を輝かせていることだ」と述べている。(c)AFP