【12月30日 AFP】鋭い岩場で登山用ロープが真っ二つに裂け、高さ1000メートルの岩棚で立ち往生したジミー・チン(Jimmy Chin)氏がしたことといえば、同じピンチに陥った人間が誰もしないだろうこと──「自分撮り」だ。

 米誌ナショナル・ジオグラフィック(National Geographic)の写真家、チン氏がホルムズ海峡(Straits of Hormuz)に面する中東オマーンの崖で撮影した究極のクライミング写真は、同誌1月号に掲載されている。「これからどうしようか、しばらく考えた。その時に自分の写真を撮ったんだ」とチン氏はAFPの取材に語った。「こういうときに『自分はナショジオのカメラマンじゃないか』って思うんだ。(あの瞬間を)記録するのは必須だった。基本だね」

「自画像」というものは何世紀も昔から存在している。しかし、カメラ搭載のスマートフォンが世界的に普及したこと、それからソーシャルメディア上で瞬時に写真を共有できるようになったことで、「自画像」は新しいレベルに到達した。

 2013年も終わりに近づき、英語辞書編集の最後の権威といわれる「オックスフォード英語辞典(Oxford English Dictionary)」の出版元が発表した「今年の言葉」は「自分撮り」だった。辞典では「自分撮り、セルフィー(Selfie):名詞、口語。自分を自分で撮影した写真。通常、スマートフォンやウェブカメラで撮影され、ソーシャルメディアのウェブサイトにアップロードされる。selfyともつづる。複数形:selfies」と説明がある。

 2014年には8800億枚の写真が撮影されると、米インターネット検索大手ヤフー(Yahoo)は予測している。地球に住む1人1人につき、123枚の計算だ。その多くが「自分撮り」だろう。

 12月上旬に行われた故ネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)元南アフリカ大統領の追悼式では、出席したバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領とデービッド・キャメロン(David Cameron)英首相、ヘレ・トーニングシュミット(Helle Thorning-Schmidt)デンマーク首相が3人で自分撮りをし、不適切ではないかと批判された。

 米誌タイム(Time)の「今年最も印象的な自分撮り11枚」には、10代の若者たちと一緒に自分撮りをしたローマ・カトリック教会のフランシスコ(Francis)法王や、自分撮りをするファンの後ろで歌う歌手のビヨンセ(Beyonce)さんなどが選ばれた。

 しかし、自分撮りで有名になるために、自分が有名である必要はない。

 米オレゴン(Oregon)州に住む新米パパのエディー・ホイーラー(Eddie Wheeler)さんは、小さな娘の横でその表情を真似ながら何枚も自分撮りし、米ソーシャルニュースサイトの「レディット(Reddit)」に投稿して一晩で「時の人」となった。(c)AFP/Robert MACPHERSON