【12月26日 AFPBB News】26日、次世代放送推進フォーラム(NexTV-F、理事長・須藤修 東京大学大学院教授・情報学環長)が4K画質による衛星放送開始に向けた実証トライアルを公開した。

 我が国では、総務省が今年5月に公表した「放送サービスの高度化に関する検討会」ロードマップの中に、高画質テレビ放送の開始目標が盛りこまれている。大まかな当面の目標に「2014年度内に高度狭帯域衛星デジタル放送による4Kテレビ試験放送を、また、2016年に高度広帯域衛星デジタル放送による8K(スーパーハイビジョン)テレビの試験放送を実現する」という2つがある。なお、前者は東経124度/128度CSで実施予定であり、スカパーJSATでの配信が予定されている。またJ:COMなどのケーブルテレビ、ひかりTVなどのIPTVでも様々なコンテンツの配信が検討されている。後者はBS及び東経110度CSでの実施が想定されている。

 本日のトライアル内で行われたデモンストレーションでは、現在、スカパー!プレミアムサービスを配信している衛星の中継器の伝送容量を想定した環境下で、4K60Pの映像をHEVC (High Efficiency Video Coding)──H.265とも呼ばれており、4Kや8Kといった超高画質映像を現在のH.264の圧縮よりも格段の効率を有するアルゴリズムで圧縮できるコーデックの総称──で、実時間で処理するリアルタイム・エンコードを施し、放送で想定している変復調処理及び衛星回線と同様の折り返し伝送路を疑似的に設定して4Kディスプレーに再現するというものが中心である。4K60Pもの超高精細映像は現在のH.264を用いると150Mbps以上もの伝送レートとなるため、衛星の中継器には収容できないという問題点が課題となっている。また、今回のトライアルのように、実際の放送環境に即して一貫して実証することは世界的にも類例がないという。

 もう1つのデモンストレーションは、2016年からのBS放送や110度CS放送での8K試験放送の実現に不可欠な、高精度圧縮技術をシミュレーションにより再現したものである。現在、8K映像はNHKのみが制作している。衛星伝送をリアルタイムで実現するまでには、1つの中継器に収まるだけの圧縮技術の達成など複数の技術的な課題があるが、こういった基礎技術を開発していく地道な努力が日本の放送技術及び産業技術の国際競争力を高めていくことに繋がるのである。(c)AFPBB News/放送アナリスト 佐藤和俊