【12月25日 AFP】悪名高きパンクロッカーのシド・ヴィシャス(Sid Vicious)がクリスマスソングで踊り、リード・ボーカルのジョニー・ロットン(Johnny Rotten)ことジョン・ライドン(John Lydon)が子どもたちにプレゼントを渡す──英パンクロック・バンド、セックス・ピストルズ(Sex Pistols)らしからぬ光景だが、1977年のクリスマスをこんな風に過ごしていたことが分かる未公開ビデオを含むドキュメンタリー番組が26日、英BBCで放映される。

 1977年12月25日、ピストルズのメンバーは、ストライキを行っていた消防士らの子どもたちのために、イングランド北部の工業都市ハダーズフィールド(Huddersfield)のナイトクラブでチャリティーギグを行った。ロットンが巨大なクリスマスケーキに飛び込み、その後、会場の皆でケーキを投げ合う様子も捉えられていた。

 この日、ピストルズのステージを撮影したディレクターのジュリアン・テンプル(Julien Temple)氏は24日、英ガーディアン(Guardian)紙に対し「ほとんどの人にとって、彼ら(ピストルズ)は、ニュースの中のモンスターだった。けれど7、8歳の子どもたちに向かって演奏する姿を見るのは、美しかった。彼らは過激なバンドだったが、皆が知っているよりもずっとハートのあるグループだった」と語っている。

 テンプル氏が「ピストルズのものでは恐らくこれが最高」と話す映像は、「ネバー・マインド・ザ・ボーブルズ:77年、セックス・ピストルズと過ごしたクリスマス(Never Mind the Baubles: Xmas '77 With the Sex Pistols)」と題された番組に収められている。映像の一部は同氏の2000年のドキュメンタリー「The Filth and the Fury」で断片的に紹介されただけで、完全版が公開されるのは今回が初めてとなる。

「(映像の中の彼らは)信じられないほどのエネルギーに満ちて輝いている」(テンプル氏)

 この慈善ギグはピストルズにとって英国で最後のステージとなった。ピストルズはこの年の12月には、英国内のほとんどの場所でライブ演奏を行うことを禁じられていた。翌78年10月、ベーシストのシドは恋人だったナンシー・スパンゲン(Nancy Spungen)さんを殺害した容疑をかけられ、その4か月後の1979年2月にドラッグの過剰摂取(オーバードーズ)で死亡した。(c)AFP