■キャッシュレス化の進展、消費者の動向がカギ

 キャッシュレス社会の影響を受けるのは犯罪者だけではない。デンマークやアイスランドなど北欧でキャッシュレス化は人々の生活を大きく変えた。ホットドッグから税金まであらゆるものがクレジットカードや携帯電話のテキストメッセージサービス(SMS)で支払われる。大半のバスが現金での運賃受け取りを拒否し、外国人観光客を混乱させる。ストックホルムに今年オープンしたスウェーデンの人気グループABBAの記念ミュージアムでもチケット購入はクレジットカードかデビットカードのみ、といった具合だ。

 スウェーデン王立工科大学(Royal Institute of Technology)の研究者、ニクラス・アルビッドソン(Niklas Arvidsson)氏は「近い将来に完全なキャッシュレス社会になることはないだろうが、現金が最低限の量に減って、ほとんど使われなくなる社会の到来は極めて現実的だ」と述べた。

 アルビッドソン氏は、当面大きな利益を得るのは銀行とカード会社だが、現金は電子マネーに比べて取り扱いコストが高いので、最終的にキャッシュレス化は社会全体にとって利益になると説明した。しかし、仮に現金が完全に消えたら、高齢者や地方に住む人々、そして長い間失業状態にあるなどの理由で信用力が低く、社会的に取り残された人々は問題に直面するという。

 小規模の小売店もキャッシュレスによる悪影響を受けている。特にスウェーデンでは、小売店がクレジットカードの発行会社に支払う取扱手数料を顧客に請求することを禁じる法律が2010年に施行され、小売店は取引1件当たり最大2.5クローナ(約39円)に購入代金の1%を加えた手数料を負担する義務が生じた。

 スウェーデン国立銀行(中央銀行)の硬貨・紙幣部門のトップ、クリスティーナ・ウェイスハマ(Christina Wejshammar)氏は「近い将来も現金は引き続き存在するだろう。完全に消えるとは思えない」と述べ、「私たちが消費者としてどう行動するか、それ次第だ」と語った。(c)AFP/Anna-Karin LAMPOU