【12月18日 AFP】欧州連合(EU)は17日、広く使用されている2種類の殺虫剤が脳の発達を阻害し、人間の健康に危険を及ぼす恐れがあるとの警告を発した。うち1種については、壊滅的なミツバチの個体数減少に関連しているとみられている。

 EUの専門機関「欧州食品安全機関(European Food Safety AuthorityEFSA)」によると、ネオニコチノイド系殺虫剤の「アセタミプリド」と「イミダクロプリド」は「人間の発達中の神経系統に影響を及ぼす可能性がある」という。

 ネオニコチノイド系殺虫剤をめぐるこのような関連性が指摘されるのは今回が初めて。EUは今年初め、ミツバチ個体数の劇的な減少の原因となっており、食用作物の受粉を脅かしているという懸念から同系殺虫剤3種の使用を禁止した。

 EFSAの専門家らは「許容されるばく露について指針水準の一部を引き下げると共に、発達神経毒性(DNT)に関する信頼性の高いデータを提供するためにさらに研究を重ねたい」とている。

 今回の研究結果は「アセタミプリドとイミダクロプリドが人間の発達中の神経系統、特に脳に損傷を与える可能性」に関する最近の研究と既存のデータに基づくものだ。

 EFSAは声明で、この2種の殺虫剤が「学習や記憶などの機能に関連するニューロン(神経細胞)と脳の構造の発達に悪影響を及ぼす恐れがある」ことを今回の研究は示唆していると指摘している。

 EFSAはまた、「許容されるばく露に関する現在の指針の一部は、発達神経毒性を防ぐための十分な保護策にはならない可能性があるため、引き下げるべきとの結論に達した」とも述べた。

 EUの行政執行機関の欧州委員会(European Commission)は今回のEFSAの研究結果に注目しており、イミダクロプリド製造元のドイツ製薬大手バイエル(Bayer)とアセタミプリドの日本曹達株式会社(Nisso Chemical)に伝えてコメントを求める意向を示している。

 同委員会の広報担当者は「原則として、次の段階は基準値の修正になるだろう」とコメントした。

 欧州と米国では、蜂群崩壊症候群(CCD)と呼ばれる正体不明の疫病が原因で、ハチの個体数が近年激減している。これにより作物の受粉、ひいては食糧生産が危機的状況に陥る恐れがあるとの懸念が高まっている。(c)AFP/Catherine BOITARD