【12月16日 AFP】乳がんの家族歴がある閉経後の女性は「アナストロゾール」と呼ばれる抗ホルモン剤を服用することで、乳がんの発症リスクが50%以上減少するとの研究報告が12日、英医学専門誌ランセット(Lancet)に発表された。

 英ロンドン大学クイーンメアリー(Queen Mary University of London)の医師チームが行った実験には、乳がんについて高い遺伝リスクを持つと考えられる閉経後の女性3864人がボランティアで参加した。乳がんの遺伝リスクが高いとされた条件は、血縁者に乳がんを発症した人が2人以上いるか、母親か姉妹が50歳になる前に乳がんを発症した、または母親か姉妹が両方の乳房に乳がんを発症した場合だ。

 この実験で、アナストロゾールを5年間服用した人は、無害な偽薬を服用した人に比べて乳がんの発症リスクが53%減少した。研究開始5年後の経過観察で乳がんを発症したのは、偽薬服用グループの85人に対し、アナストロゾール服用グループでは40人だった。

 また、アナストロゾールは乳がんの2種類の標準治療薬、タモキシフェン(tamoxifen)やラロキシフェン(raloxifen)よりも有効な上、副作用も少ないと研究チームは述べている。

 同大がん予防センターのジャック・キュジック(Jack Cuzick)所長は「この研究は、乳がん予防における胸躍る進歩だ。家族歴などのリスク因子を持つ閉経後の女性の乳がん発症リスクを抑えるために、アナストロゾールを第一選択薬にすべきであることがこれで分かった」と述べている。副作用はまれで、大半は筋肉のうずきや痛み、ほてりやのぼせがわずかに増加する程度だという。同所長は「現在の優先事項は、できるだけ多くの女性が今回の新発見による恩恵を受けられるようにすることだ」と語った。

 アナストロゾールは「アリミデックス」という商標で販売されており、多くの乳がんの原因となる女性ホルモンのエストロゲン(Estrogen)が体内で生成されるのを抑制することで作用する。アナストロゾールはこれまでに10年以上、いわゆる「エストロゲン受容体陽性乳がん」と診断された閉経後の女性の治療に使用されてきた。

 研究チームは今回確認された予防効果が持続するかどうかを確認し、さらに副作用についても変化が起こらないか監視するために「最低10年間、できればもっと長く」ボランティアの追跡調査を行う意向だとキュジック所長は述べている。(c)AFP