【12月13日 AFP】トカゲの肺は、鳥などのように空気が「一方通行」で流れる仕組みであることが分かったと、米ユタ大学(University of Utah)の研究チームが11日、発表した。生物の進化史に再考を促す発見だという。

 人間など多くの動物は呼吸する際、吸い込んだ空気に含まれる酸素を肺の一番奥の肺胞と呼ばれる小さな袋のようなものが集まった組織から血液中に取り込み、代わりに排出された二酸化炭素を逆流させ呼気として放出する。これに対し鳥類の肺は、ガス交換をせず、気管に入った空気は肺を一方通行で通過して出ていくことが分かっている。

 この一方通行の呼吸システムは、激しい運動の際に効率よく酸素を取り込むことができると考えられ、鳥が酸素濃度の低い高高度で飛び続けることができるのはこのためだとの説もある。

 今回、ユタ大学の生物学者C・G・ファーマー(C.G. Farmer)氏率いる研究チームは、アフリカに生息するサバンナオオトカゲの肺を3次元(3D)スキャナーで調べ、また、呼気流量計を使って同トカゲ5匹の肺の中の空気の流れを確認した。さらに、死んだトカゲ10匹の肺にポンプで空気を送り込んで膨らませ、そこにヒマワリの花粉を混ぜた水を流して、どのように流れるかを見た。

 いずれの実験でも、流れは一方通行だった。

 研究チームは、サバンナオオトカゲの気管に入った空気は2つに枝分かれしそれぞれの肺を一方通行で流れ、また気管から出ていくことを発見した。空気の流れ方にも、鳥と全く同じというわけではないが、同様の潮汐のような流れがみられたという。電話取材に応じたファーマー氏によると、これと似た一方通行の呼吸システムはアメリカアリゲーターにも見られ、ワニの呼吸に一役買っているという。

■2億5100年前の大量絶滅がきっかけか

 一方通行の呼吸の仕組みを一部の生物が備えるようになった過程は謎に包まれている。だが、約2億5100万年前に起きた地球史上最大級の大量絶滅にヒントがあるとされる。このときは、大気中の酸素が急激に低下したことにより地上の脊椎動物の3分の2とほぼ全ての海洋生物が絶滅したといわれる。

 ファーマー氏は、一方通行の呼吸システムを獲得した動物だけが酸素の少ない環境に適応し生き延びたと考えており、鳥やワニの祖先もこのとき既に一方通行の呼吸の仕組みを持っていたのではないかと指摘している。(c)AFP