【12月11 日 AFP】米国で1912~29年の間に制作された無声映画の3分の2以上がもはや存在しない──米議会図書館(US Library of Congress)は4日に公表した報告書で、古い映画の保存は急務だと訴えた。

 公文書保管人のデビッド・ピアース(David Pierce)氏の報告書によれば、映画草創期に米国で作られた1万1000本のうち、オリジナルの35ミリフィルムで残っているのは、わずか14%の1575本だけ。外国語版や低質のフィルムでしか残っていない作品が、この本数を若干下回る。また5%が完全な状態では残っていない。

「バスター・キートン(Buster Keaton)、チャーリー・チャップリン(Charlie Chaplin)、ハロルド・ロイド(Harold Lloyd)の全出演作と、メアリー・ピックフォード(Mary Pickford)やダグラス・フェアバンクス(Douglas Fairbanks)が彼らの絶頂期だった1920年代に作られた映画、それから『国民の創生』(The Birth of a Nation、1915年)や『つばさ』(Wings、1927年)といった大作は今も存在している。しかし残っている映画に比べて、残っていない映画の数は6倍にもなり、現在目にしている古典映画よりも数多くの同様の価値を持つ映画が所在不明か、失われたとみられる」とピアース氏は報告している。今はない無声映画には、サイレントの花形女優クララ・ボウ(Clara Bow)主演の短編映画4作や、『華麗なるギャツビー(The Great Gatsby)』の1926年版である『或る男の一生』も含まれているという。

「米国の無声映画の消失は、わが国の文化記録における取り返しのつかない損失だ」と、米議会図書館のジェームズ・ビリングトン(James Billington)氏は言う。同氏は1988年に制定された法律のもと、米国の映画遺産を保存する方法を探す作業にあたっている。

 映画の保存を長年訴えてきたマーティン・スコセッシ(Martin Scorsese)監督は、無声映画の芸術性は「私たちの文化に不可欠だ。奇跡的に無声映画が見つかったときは、いつも私たちに、失った宝を思い起こさせてくれる。そして他の作品も発見されるかもしれないという希望も与えてくれる」と語っている。(c)AFP