【12月10日 AFP】ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は9日、同国最大の通信社の国営ロシア通信(RIA Novosti)を改組し、反同性愛で知られるニュースキャスターを代表に据えたメディアグループを新設する大統領令を出した。これにより、同国内で大きな議論が巻き起こっている。

 露政府の公式ホームページに掲載された文書によると、新社名は「きょうのロシア(Russia Today)」で、「ロシアの国家政策と国民生活の国外発信」に重点を置くとしている。また、改組の理由として、「国営メディアリソースの効率向上」を目指し、多言語サービスを提供する巨大グループを立ち上げるためと説明している。

 13年にわたり続くプーチン体制についてインターネット上で批判が高まる中、国営メディアリソースを一本化し、ロシアの対外イメージ形成に積極的な手法を採用していこうとする露政府の方針の表れとみられる。

 この新メディアグループの代表に任命されたのは、同性愛や米国、国内野党勢力を公に批判し、プロパガンダの代弁者と非難されることも多いドミトリー・キセリョフ(Dmitry Kiselyov)氏。同国国営テレビ局の副代表を務める同氏は、毎週日曜に放送され、頻繁に野党勢力をこき下ろす報道番組の司会者として最も良く知られている。

 ロシア野党勢力のカリスマ的指導者アレクセイ・ナワリヌイ(Alexei Navalny)氏は自らのブログに、「最初にこのニュースが報じられたときはみんな冗談だと思ったが、そうではなかった」とつづった。

 キセリョフ氏は、あるトーク番組の中で、同性愛者は交通事故で死亡しても献血や移植用心臓の提供を禁じられるべきで、「他の人の命を継続させるにはふさわしくないため、埋められるか、焼かれるべきだ」と語った発言が、最も良く知られている。

 ロシア通信は近年急速にその規模を拡大、新サービスとしてスポーツや経済記事も配信するようになっていた。新たなメディアグループ立ち上げのニュースは職員にも衝撃を与えたものとみられ、ある従業員はクレムリンのホームページで知ったと語った。部内には、「解散委員会」の設置を通知し、全職員に「冷静さを保つよう」呼び掛ける内容のメールが流されたのみで、詳しい説明はなかったという。

 同社は世界でも最大規模のネットワークを持つ通信社の一つで、来年2月に開催されるソチ冬季五輪の公式スポンサーにもなっている。(c)AFP/Maria ANTONOVA