【12月9日 AFP】英スコットランド出身の歌手スーザン・ボイル(Susan Boyle)さん(52)が、発達障害の一種であるアスペルガー症候群と診断されていたことを明らかにした。

 8日付の英紙オブザーバー(The Observer)によると、2009年にオーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント(Britain's Got Talent)」に出場したことで一躍世界的に有名な歌手になったボイルさんは、学習障害が原因で長年いじめられていた。しかし、1年ほど前にアスペルガー症候群と診断されたことで「救われた気持ちになった」という。

 子どものころに「脳に損傷がある」という間違った診断をされていたという。「ずっと不当なレッテルだと思っていました。今は、自分の問題がはっきりと分かって、ホッとしています。以前より、自分自身を楽観視できるようになりました」。

 また、熱心なカトリック教徒であり未婚のボイルさんは、デビュー前には教会のボランティアとして活動していたものの、生活保護に頼る暮らしだった。

 だが「ブリテンズ・ゴット・タレント」でミュージカル「レ・ミゼラブル(Les Miserables)」の挿入歌「夢やぶれて(I Dreamed A Dream)」を熱唱したボイルさんの歌声は、インターネットを通じて世界中に広まり、動画共有サイト、ユーチューブ(YouTube)に投稿された動画は1億4000万回近く再生された。デビューからこれまでに4枚のアルバムを発表しており、法王の前でも歌声を披露した。

 ひねりの利いたユーモアと美声で瞬く間に多数のファンを獲得したボイルさんだが、急に有名になり、メディアの関心を集めるようになったことで、一時は心身衰弱の状態になりかけた。

 アスペルガー症候群は、患者の他人とのコミュニケーションや社会的交流に影響を及ぼす。また、患者の多くは「社会的手がかり(非言語的情報)」を読み取ることや、取るべき適切な行動を判断することが難しい。

 ボイルさんは出生時に一時、酸欠状態に陥っていた。学校に通っている間はずっといじめられ、同級生には「スージー・シンプル」(「シンプル」は「単純な」の意)というあだ名で呼ばれていた。だが、最近受けた知能テストの結果では、知能指数(IQ)は平均以上であることが分かっていると、ボイルさんはオブザーバー紙に語っている。

 ボイルさんは「新たな診断で生活が変わることはないでしょう」としながらも、自身のアスペルガー症候群について「共に生き、向き合っていかなければならないもの」と語っている。診断によって今後、「私という人間について、また私がなぜその行動を取るのかについて、より深く理解してもらえるようになり、他の人たちの私に対する態度も良い方向に変わるでしょう」という。

 なお、米フォックス・サーチライト・ピクチャーズ(Fox Searchlight Pictures)は、スコットランドの中心都市エディンバラ(Edinburgh)近郊ブラックバーン(Blackburn)での質素な生活からスターダムにのし上がったボイルさんの成功を描く映画の制作に関心を持っていると伝えられている。(c)AFP