【12月7日 AFP】インドネシア・バリ(Bali)島で開かれていた世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)の閣僚会議は7日、「税関手続きの簡素化」など3分野で部分的な合意に達した。12年に及ぶ新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド Doha Round)で初の具体的な成果となる。

 WTOが掲げる「世界全体における貿易障壁の打破」という目標には程遠いが、関係者らは、難航していたドーハ・ラウンドの中で「画期的な」進展だと歓迎している。

 今回合意されたのは、貿易を円滑にするための「税関手続きの簡素化」、農業補助金の特例を認める「農業の一部」、後発発展途上国支援に関する「開発」の3分野。

 バリ島での会議は4日間の日程で6日に閉会する予定だったが、会期を延長し、7日も未明から協議を行っていた。

■WTO交渉難航、個別の地域協定が台頭

 2001年にカタールのドーハで始まったドーハ・ラウンドは、貿易の障壁を取り除き、富裕国と貧困国のどちらにも公平で世界的に拘束力のある枠組みの確立を目指している。しかしWTO加盟159か国・地域それぞれが持つ保護貿易主義的な思惑から、合意に達することができず難航していた。

 今回もインドと米国が農業補助金をめぐり対立した。また米国の対キューバ経済制裁に言及する文言が合意文書案から削除されたことにキューバなど南米4か国が反発したが、文言を修正することで合意にこぎ着けた。

 今回の合意は今年9月にWTO事務局長に就任したロベルト・カルバーリョ・デ・アゼベド(Roberto Carvalho de Azevedo)氏の成果ともいえる。ドーハ・ラウンドが行き詰まっている間に主要貿易国の間では、米国をはじめとする12か国の環太平洋経済連携協定(Trans-Pacific PartnershipTPP)など個別の地域協定が登場しつつある。

 こうした中、アゼベド氏は、ドーハ・ラウンドで世界規模の合意を取り付けられなければ、WTO自体が形骸化するとの危機感を示し、交渉に切迫感をもたらした。TPP交渉に参加する12か国は7日からシンガポールで閣僚会合を開き、協定の枠組みを固めようとしている。アゼベド氏はこうした地域協定は貧困国に交渉の場を与えず、「悲劇的な」結果を生むものだと批判している。

 グローバリゼーションの専門家である米ボストン大学(Boston University)のケビン・ギャラガー(Kevin Gallagher)氏は「力のある大国は多角交渉を重んじるよりも、TPPなどの地域貿易交渉に舞台を移し、WTOで拒否された『危険な』提案を推し進めようとするだろう」とみている。(c)AFP/Dan Martin