【12月4日 AFP】ヘビのゲノム(全遺伝情報)に関する世界初の本格的な研究により、ビルマニシキヘビは地球上で最も高度な進化を遂げた生物の一種であることが明らかになったとする研究報告が、2日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。

 米大学主導の国際研究チームが発表した論文によると、今回の研究によって、東南アジアに生息するビルマニシキヘビがどのように生存・繁栄してきたのかに関する新たな手がかりが得られるだけでなく、人間の病気の治療に向けての新たな道が開けるかもしれないという。

 研究に参加した米コロラド大学(University of Colorado)医学部のデビッド・ポロック(David Pollock)准教授(生化学・分子遺伝学)はAFPの取材に「ヘビは基本的に、生理レベルから分子レベルに至る生態のあらゆるレベルで驚異的な変化を遂げてきている」と語った。

 過去500万年から3000万年にわたって、機能的に重要な意味を持つ形で発生したこれらの変化により、ヘビは他の生物には見られないほどの高い状況適応能力を備えるようになったと同准教授は指摘する。

 特に科学者らの興味を引いているのは、成長すると体長7メートルを超えるビルマニシキヘビが、自分と同じくらいの大きさの餌をどのようにして食べることができるのかという点だ。

 ビルマニシキヘビは、シカを丸ごと包み込めるほど大きく頭部と顎を開くことができるだけでなく、餌が腐敗する前に速やかに消化するため、臓器を非常に大きく膨張させて過活動状態にすることもできる。1~2日間にわたり、ビルマニシキヘビの心臓、小腸、肝臓、腎臓は、餌を食べる前のサイズの約1.3倍から2倍にまで大きくなる。餌が消化されると、各臓器は通常の大きさに戻る。

 ビルマニシキヘビのゲノムを解析した結果、遺伝子の発現、タンパク質の適応、ゲノム構造の変化、この3つの複雑な相互作用により、同じ遺伝子を持つ他のヘビにはできないことでも、ビルマニシキヘビにはできることが示唆された。

 ビルマニシキヘビは進化の過程で、地下で生活していたことがあった。この期間、頭蓋骨が細長くなっただけでなく、得られる酸素量の減少に応じて肺活量は下がり、視力も衰えたとポロック准教授は説明する。また地上に生息圏が移った後は、不安定な餌の獲得に対応できるよう、代謝を劇的に変化させる能力を発達させたという。

 論文の共著者の1人、米アラバマ大学(University of Alabama)のスティーブン・セコー(Stephen Secor)准教授によると、このような各主要臓器の大きな変化をビルマニシキヘビの体がどのように調整しているかを理解することで、臓器不全、潰瘍、代謝障害などの人間の病気の背後にあるメカニズムに関する新たな理解が得られる可能性があるという。

 同准教授は「ビルマニシキヘビのゲノム情報を手にしたことで、代謝率の劇的増加、胃酸生成の停止、腸機能の向上、心臓、腸、脾臓(ひぞう)、肝臓、腎臓の速やかな拡大などを行うために用いられている多くの未解明の分子メカニズムを研究できるようになった」と指摘する。

 ビルマニシキヘビのゲノム研究は、米テキサス大学(University of Texas)傘下のアーリントン理科大学(Arlington College of Science)のトッド・カストー(Todd Castoe)助教の主導で、4か国38人の研究者らと共同で行われ、キングコブラのゲノムと共にPNAS誌に発表された。(c)AFP/Kerry SHERIDAN