【12月3日 AFP】国連(UN)のナビ・ピレイ(Navi Pillay)人権高等弁務官は2日、スイス・ジュネーブ(Geneva)で記者会見し、シリアのバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領とその側近たちが戦争犯罪と人道に対する罪に関与したことを示す証拠を入手したと発表した。

 ピレイ人権高等弁務官は、国連が実施した33か月に及ぶシリア内戦での人権侵害に関する調査により、「非常に重大な罪、戦争犯罪、人道に対する罪の証拠が大量に見つかった」、「その証拠は、国家元首を含む政府の最高位に責任があることを示している」と述べた。

 国連の調査で入手された証拠から、同国内戦下での犯罪行為へのアサド大統領の直接関与が示されたのはこれが初めて。4委員からなる国連の調査委員会は、内戦勃発直後から人権侵害調査を継続しているが、これまでは政権側と反体制派の双方に戦争犯罪の疑いがあるとしていた。

 さらに調査団は今回初めて、犯罪行為に及んだとみられる人物を列挙した名簿を作成した。ただ、ピレイ人権高等弁務官は、名簿は「信用できる捜査への提出要請がない限り非公開とする」と話しており、捜査は「国内捜査にも国際捜査にもなり得る」が、説明責任を明確にするために、オランダ・ハーグ(Hague)の国際刑事裁判所(International Criminal CourtICC)に一任されるよう求めていく考えを強調した。

■内戦の死者、約12万6000人に

 英国を拠点に、現地の人権活動家や弁護士、医師らのネットワークからシリア情勢に関する情報を集めているシリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)は同日、シリア内戦での死者は1日時点で12万5835人と発表。うち4万4381人が民間人で、この中には子ども6627人と女性4454人が含まれているという。(c)AFP/Nina LARSON