【11月29日 AFP】スペインで、中国から養子に迎え入れた12歳の娘を窒息死させたとして逮捕・起訴されたジャーナリストと弁護士の男女の事件が注目を集めている。先週には、被告らにかけられたおぞましい嫌疑の詳細が明らかになった。

 赤ん坊のときに中国からスペインへ養子に出されたアスンタ・ヨン・ファン・バステラ・ポルト(Asunta Yong Fang Basterra Porto)さんの遺体は9月22日、スペイン北西部の森の中で、通りかかった人によって発見された。

 以来メディアは、養母であるスペイン人弁護士のロザリオ・ポルト(Rosario Porto)被告(44)が泣きながら警察に連行される写真を掲載し続けている。ポルト被告は以前、ガリシア(Galicia)自治州でフランスの名誉領事を務めたこともある。

 また、ポルト被告の元夫でアスンタさんの養父であるジャーナリストのアルフォンソ・バステラ(Alfonso Basterra)被告(49)が手錠をかけられている写真もメディアに氾濫している。

 2人は、9月27日に逮捕、10月18日に殺人罪で起訴され、現在は勾留されている。両被告とも罪状は否認している。

 アスンタさんが暮らしていたサンティアゴ・デ・コンポステーラ(Santiago de Compostela)のホセ・アントニオ・バスケス・タイン(Jose Antonio Vazquez Tain)裁判官はこれまで、この事件に関する情報公開を禁じていた。

 だが先週になり、その命令が解かれたことで、同国に衝撃が広がった。

 11月20日に公表された報告書の要旨には、ポルト被告がバステラ被告と共謀し、「娘に3か月間、薬物を吸わせ、9月21日に窒息死させた」と書かれている。さらにバステラ被告については「ポルト被告の同意のもと、(鎮静剤の)Orfidalを子供に過剰に与え、窒息させやすいようにした」とも書かれていた。

 また、ポルト被告は取り調べに対し、矛盾する内容を供述し、元夫のバステラ被告が「少なくとも1回、子どもに白い粉を盛っていた」と主張したが、この白い粉は見つからなかったという。

 一方、ポルト被告の弁護士は、これらが全て「臆測」にすぎないと否定している。

 またバステラ被告は、元勤め先の地元紙コレオ・ガジェゴ(Correo Gallego)に「ここに書かれていることはすべて意味をなさない」と語っている。「もし彼らが言うように、娘がOrfidalを過剰摂取したのなら、私の家を出るときには既に死んでいたはずだ」

 防犯カメラの映像からは、母親と一緒に家を出たときはアスンタさんの意識はあったことがうかがえる。

 今回明らかになったおぞましい新情報にメディアが飛びつく一方、2人には明確な動機がないと見る人も少なくない。「両親が2人とも娘を殺害するという結論に達したというのは、理解しがたい」と、地元紙ボス・デ・ガリシア(Voz de Galicia)のフェルナンド・オネガ(Fernando Onega)記者は書いている。

「アスンタのミステリー」と題された論説記事で、同記者は「ロザリオ・ポルト被告もアルフォンソ・バステラ被告も、まだ裁判が始まったわけではない」と指摘。「この先には、メディアによる延々とした『並行裁判』が続くのではないだろうか」と述べている。(c)AFP/Roland LLOYD PARRY