【11月25日 AFP】フィリピン政府は24日、今月8日に超大型台風30号(アジア名:ハイエン、Haiyan)が同国を直撃した際に多数の命を奪った高潮に再び見舞われる事態を避けるために、マングローブの植林面積を拡大する計画を発表した。

 ベニグノ・アキノ(Benigno Aquino)大統領の報道官、エルミニオ・コロマ(Herminio Coloma)氏が語ったところによると、この計画は、今回の台風を受けて立案されている「環境保護の包括的計画」に盛り込まれる措置の1つだという。

 ラモン・パヘ(Ramon Paje)環境天然資源相が準備を進めているこの計画には、たとえ当該地域にすでに居住している住民を移住させることになっても、沿岸部に「建築禁止区域」を設ける措置が盛り込まれる予定だという。

 コロマ氏は記者会見で「大統領の指示の1つに、沿岸部の自然の防護壁となるマングローブの回復がある。マングローブ植林の準備はすでに完了しており、植林が成長するのに5~7年かかるので、すぐに植林を開始したい」と述べた。

 マングローブとは、満潮時に植物の根が海水に浸る湿地帯のような海岸地域に生育する高木と低木の総称。

 今月8日にフィリピン中部諸島を横断した超大型台風30号は、7000人近くの死者・行方不明者を出したが、その多くは沿岸部を襲った高潮で命を落とした。その際には高さ5メートルの津波のような高波が内陸部深くまで押し寄せ、建物を破壊した。

 コロマ氏は、環境省が作成する「ジオハザード・マッピング」で、暴風雨や洪水などの自然災害に弱い地域が特定される見込みだと述べている。

 比政府がマングローブ地域の保護を推進してきたのは、高潮や高波を防ぐためだけでなく、マングローブが海岸線の浸食を防ぎ、海洋生物の生育場所として機能し、さらには地球温暖化を防ぐ炭素吸収源としての機能を果たすからだ。

 だが環境省によると、商業用養魚池などの他の目的に転用されたり、まきや材木にするために伐採されたりして、多くのマングローブ地域がすでに失われているという。(c)AFP