【11月19日 AFP】技術の進歩は読書に変革をもたらしたが、米首都ワシントンD.C.(Washington D.C.)では、昔ながらにペーパーバックを並べた「ミニ図書館」が、民家の庭に相次いで開設されている。

 カード目録も延滞料もないこうした私設図書館は、「1冊取り出したら、1冊戻す」という単純な原則に基づいて運営されている。読んだ本を返しても、別の本を寄贈してもよい仕組みだ。

 2011年5月の母の日にワシントン北方郊外のベセスダ(Bethesda)でミニ図書館を開いたケビン・サリバン(Kevin Sullivan)さんは、「先週11冊が寄贈された」と語った。もともと、読書好きの妻へのプレゼントとして設置したのだという。サリバンさんは自宅から道路に出る私道の端にある赤い郵便受けの上方に、家の形をした小さな木箱を設置し、毎週30冊前後の本を置き始めた。箱の屋根部分には、英作家オスカー・ワイルド(Oscar Wilde)の名言を記した。本の半数は児童書で、自宅が学校に近いサリバン夫妻は、生徒や保護者が立ち寄って本を手に取ることを期待しているという。

 こうしたミニ図書館の概念は2009年、中西部ウィスコンシン州(Wisconsin)の小都市が発祥の地だ。トッド・ボル(Todd Bol)さんが教員だった母親の死後、校舎の模型を作り、両親の蔵書を入れて「本、無償」の看板を掲げたのが始まりだった。その直後からボルさんの近隣住民も、自宅私道の端に本を陳列し無料で貸し出すようになった。

 ミニ図書館は、海を越えてウクライナやパキスタンにも設置されている。ボルさんがAFPに語ったところによると、ミニ図書館は来年年明け時点で世界55か国、50州の1万5000か所で設置されていると予想され、毎月700~1000か所の割合で増え続けているという。

■近所づきあいに一役買うケースも

 外形は鳥の巣箱のようなミニ図書館だが、その形状は置時計やロボット、劇場など様々で、それぞれ設置者のイマジネーションが発揮されている。

 自宅前にミニ図書館を設置した歯科矯正医師のフィリップ・バハブ(Phillip Vahab)さんは「妻の方が自分より読書量が多い」と語り、本より近所づきあい作りに比重を置いていたことを明らかにした。バハブさんは1月、近隣住民の支援を受け、ワシントン市内初のミニ図書館を設置。その隣にベンチを作り、通行人が座って読書したり、談笑したりできる環境を整えた。バハブさんは、ほぼ毎日のように本が寄贈されていると熱っぽく語り、首都という土地柄のせいで政治関連の本が多いものの、フェミニズム文学の本をどっさり寄贈してくれた住民もいると付け加えた。

 ワシントンの公立図書館長を務めるジニー・クーパー(Ginnie Cooper)さんは、ミニ図書館が市内で増え続けている現状は非常に喜ばしいと歓迎する意向を示し、「公立図書館またはミニ図書館から良書を借りることは、ワシントンの読書振興を持続する上で一つの方法になる」とコメントした。(c)AFP/Anne RENAUT