【11月15日 AFP】(一部更新)イヌ科動物の化石から採取したDNAと現代のイヌ科動物のDNAを比較したところ、イヌ(イエイヌ)の起源が欧州にかつて生息していたオオカミである可能性が高いとの国際研究が14日、米科学誌サイエンス(Science)に発表された。

 人間の最も古く親しい友であるイヌの祖先は、狩猟採集民が捨てたゴミから骨をあさっていたとされるが、次第に大胆な行動をとるようになり、より多くのエサを食べられることを学んだ末、人間になついたと考えられている。この家畜化のプロセスについて研究チームは、約1万9000年~3万2000年前に始まったとみているという。

 フィンランドのトゥルク大学(University of Turku)や米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California Los AngelesUCLA)などの研究チームは、先史時代のイヌ8匹、オオカミ10匹の化石から抽出したミトコンドリアDNAを分析し、世界各地に現在生息するオオカミやイヌから採取した77個のミトコンドリアDNAサンプルと比較した。

 化石はロシア、ウクライナ、中欧、米国、アルゼンチンから採取され、古いものは3万年以上前のものだという。一方の現代のイヌ科動物のDNAサンプルは、イスラエル、中国、スウェーデン、メキシコなど世界各地で採取された。

 研究を行った米カリフォルニア大学ロサンゼルス校のロバート・ウェイン(Robert Wayne)氏は「最古のイエイヌは欧州を起源としている。これは避けがたい結論だ」と述べている。

 一方で、オオカミの家畜化がどこで最初に行われたかは、結論が出たと言うにはほど遠いと考える研究者たちもいる。

 2002年にサイエンス誌で発表された別の研究結果では、イヌの起源は中国南部だとされていた。この研究を行ったスウェーデン王立工科大学(Royal Institute of Technology)のペータ・サボライネン(Peter Savolainen)准教授は、今回の研究では重要な地域である中東と中国からのサンプルが欠けていると指摘。「中国南部には、ここでしかみられない独自のイヌの系統が数種類存在する」として、やはりイヌの起源は中国にあるとの見方を示した。

 イヌの中国起源説に対し、今回の研究の主執筆者、トゥルク大のオラフ・テールマン(Olaf Thalmann)氏は、先行研究よりも完全なDNAシークエンシング(配列決定)やより古い時期のサンプルを使用した結果、イヌの起源が欧州であるとの結論に至ったと反論。また、イヌは欧州の探検家らと共にアメリカ大陸へと渡った可能性が高いことも分かったと述べている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN