【11月5日 AFP】オーストラリア北東部で、体長が現存種の倍の1メートルはあったとみられる巨大なカモノハシの歯の化石が発見された。発見に関った科学者らは5日の米学術誌「脊椎古生物ジャーナル(Journal of Vertebrate Palaeontology)」に掲載された論文で、「ゴジラのような巨大カモノハシ」と表現している。

 この絶滅種の化石は、多数の化石が出土する地区として有名な世界遺産、豪北東部クイーンズランド(Queensland)州リバースレイ(Riversleigh)で発見された。これまで発見されたことがない種であり、「Obdurodon tharalkooschild」と命名された。

■歯の化石から見える新たな真実

 現存するカモノハシは豪州東部にのみ生息する。水辺の深い穴に住む臆病な夜行性動物で、歯はない。一方、今回見つかった絶滅種の歯は1つで、非常に大きく強力なものだという。豪ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)のマイク・アーチャー(Mike Archer)教授によれば、この歯の大きさから体長は現存種の2倍の1メートル程度だったとみられる。

 鳥類、哺乳類、爬虫類の特徴を併せ持つカモノハシは、これまでの数百万年という長い歳月をかけて歯を失い、小型化していったと考えられてきた。だが、今回の発見は定説を覆すものだ。科学者らはこの絶滅種について、現存種の直接の祖先ではないと考えている。

 アーチャー教授は「新種の発見は衝撃的だった。これまでに見つかった化石からカモノハシの進化系統樹は、ほぼ一直線と見られていた。しかし、これで系統樹には予想していなかった枝分かれが存在し、その分岐系統の一部の種が巨大化していったことが分かった」と述べている。

■現存カモノハシも絶滅の危機に

 絶滅種は現存種と同じようにほぼ水生動物で、数百年前にリバースレイ地区を覆っていた森の淡水周辺で暮らしていたとみられている。ザリガニなどの淡水産甲殻類や、カエルやカメといった小さな脊椎動物を餌にしていたのだろうと、ニューサウスウェールズ大生物地球環境科学科のスザンヌ・ハンド(Suzanne Hand)氏はいう。

 現存するカモノハシが今後も長期的に生存できる可能性については、これまでも懸念されてきた。アーチャー教授は、今回の発見はその懸念に拍車をかけるものだと指摘。発見が示すものは「今は絶滅してしまったカモノハシの種が、さらにいたということだけだ」と述べている。(c)AFP