【11月4日 AFP】米国の若者が最も好むソーシャルネットワークになりつつある米マイクロブログ「ツイッター(Twitter)」──スポーツ番組やバラエティー番組を観る視聴者たちにとっては重要な「第2の画面」で、また政府転覆を目指す活動家たちにとっても有用なツールだ。

 誕生からの短い歴史の中で、ツイッターは意見交換のための簡易ツールとしてだけでなく、国際政治や文化、エンターテインメントの中にもしっかりと根付くことになった。政治的な場面では、アラブ諸国での民衆運動をはじめ、米国その他の先進諸国においても民主化を推進する力となっている。

■「アラブの春」に及ぼした影響

 米ジョージタウン大学(Georgetown University)のコミュニケーション学教授でアラブ研究者のアデル・イスカンダル(Adel Iskandar)氏は、「(アラブ諸国においては)ツイッターの影響で国家による世論の支配が極めて困難になった」と語る。「(権力側は)公式な声明を発表することはできても、即座に確固たる世論の反応にさらされる。権力の力学と構造が変わった」

「アラブの春」の発生がツイッターによるものとの考えについては「単純化しすぎ」と話すイスカンダル氏だが、ツイッターが「物事を加速させた」との考え方には同調する。「(本来なら)これらの抗議運動が起きるまでには、6~7年掛かったかもしれない。だが数日のうちに、数千キロメートル離れた人々も、何が起きているのかを知ることができた」

■民主化運動の重要なツール

 イスカンダル氏は、米国やその他の国々にも同じことが当てはまると指摘する。ツイッターでは、政治指導者たちが自分たちのメッセージをコントロールしようとしていても、大勢の人々が即座に反応したり、そのメッセージの偽りを暴いたりすることが可能だからだ。「(ツイッターには)いとも簡単に体制を妨害する術が内包されている」

 米ワシントン大学(University of Washington)のデジタル行動主義研究プロジェクト(Digital Activism Research Project)を率いるフィリップ・ハワード(Philip Howard)氏は、独裁国家が米SNSフェイスブック(Facebook)を使う反体制活動家らの取り締まりには成功しているものの、「ツイッターではコンテンツがより速くに流れるため、そのような取り締まりが困難になっている」と指摘する。

 米ウェルズリー大学(Wellesley College)のメディア芸術科学科を率いるパナヨティス・メタクサス(Panagiotis Metaxas)氏は、フェイスブックなどのプラットホームとは違い、それぞれのツイート(つぶやき)が等価であることをツイッターの優れている点として挙げた。またツイッターには、フェイスブックにはないやり方で、うわさや虚偽の主張を沈静化できる特徴もあるとしている。

■幸福度チェックやインフルエンザ流行の監視も

 ツイッターの即時性はテレビでも活用されている。生放送のダンス・バラエティー番組「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ(Dancing With The Stars)」では視聴者の即座の反応を得る目的で用いられ、人気オーディション番組「アメリカン・アイドル(American Idol)」では出場者への投票に使われている。

 またその利用者が増えるほど、ツイッターは「流行」や「気分」などの重要な社会的なデータの分析に活用できるようになるとされている。すでにインフルエンザなどの感染症の流行や食中毒などの監視に用いられているほか、「幸福度指数」にツイッターを利用する研究者や、1日や1シーズンのスパンで変化する気分をツイッターで分析している研究者もいる。

 研究者がツイッターを好む理由は、ほとんど全てのツイートが公開されており、ツイッター運営企業がデータをダウンロードするための簡単な方法を提供しているからだ。

 米ノースイースタン大学(Northeastern University)の計算機科学研究者アラン・ミスロブ(Alan Mislove)氏は「(ツイッターでは)一国全体や複数の国々に広がる大規模なデータサンプルを得ることができる」と話す。「文章から気分やパターンを解析することができる。これらのデータは心理学や社会学、政治科学、地理学などの研究者によって利用されている」

 ツイッターは組織化のために有用なツールである一方、選挙で誰が当選するのか、ある映画がヒットするのか、などの事象を予測するのに役立つ日常会話の場でもある。

■「親の監視から逃れる」若者たち

 ソーシャルメディアが数多く存在するなか、米国の若者には現在、ツイッターを好む傾向がみられるという。米証券会社パイパー・ジャフリー(Piper Jaffray)が行った調査によると、ツイッターを好んで使っていると回答した若者は26%に上った。

 米独立系世論調査機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)のアマンダ・レンハート(Amanda Lenhart)氏は「ツイッターはシンプルさというニーズに合致している」と指摘する。「140文字の制限があり、たくさん書く必要がない。また若者たちはツイッターのプライバシー設定も好んでいるようだ」

 レンハート氏によると、若者たちはフェイスブックよりもツイッターのほうが管理が少なくて済むと考えているという。ツイートは「流れ」であり、「まるで消えていくかのように感じられる」のがその理由だ。

 他方、ある専門家は「フェイスブック上での親の監視から逃れるため」にツイッターを使う若者も多いと指摘している。(c)AFP/Rob Lever