【11月1日 AFP】中国・北京(Beijing)の天安門(Tiananmen)広場前で起きた自動車の突入・炎上事件を中国政府が「テロ攻撃」と断定したことについて、中国内外のウイグル人らは、中国政府がこの事件をウイグル人を弾圧する口実にしているとして非難した。中国国内では、大半がイスラム教徒を占めるこの少数民族に対する締め付け強化の兆候が見え始めている。

 北京市警察の30日の発表によると、事件を起こしたのはウスメン・ハサン(Usmen Hasan)容疑者で、母と妻が同乗するスポーツ用多目的車(SUV)に「ジハード(聖戦)」を呼び掛ける旗となたを所持して広場内に突入、初代国家主席の毛沢東(Mao Zedong)の巨大肖像画前で衝突した後、自ら車に火をつけた。

 事件では車内にいた3人と観光客2人の計5人が死亡、40人が負傷したとされている。警察は、事件発生から10時間経たないうちにウイグル系とみられる名前を持つ容疑者5人を拘束したことを、2日後にようやく公表。容疑者らの出身民族については触れられていないが、中国国営紙・環球時報(Global Times)は、事件に関与した容疑者は全員がウイグル人だと伝えている。

 少数民族ウイグルは、中国の極西部・新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)に集中して暮らしている。同自治区では、民族間の緊張関係や中国政府への反発が暴力事件に発展することが多々あるが、政府はこうした事件をしばしば「テロリズム」と呼んでいる。一方のウイグル系団体はこの見方を、宗教面・治安面での締め付けを正当化するものとして非難している。

 世界ウイグル会議(World Uyghur CongressWUC)の米国駐在広報担当はAFPに対し、同事件に関する中国政府の説明は欠陥だらけで差別的なものだと訴え、「テロ事件と断定された理由は、乗車していたのがたまたまウイグル人だったからにすぎない」と述べた。

 さらに、男が家族まで巻き添えにしたこと、また車がほぼ完全に焼け落ちて乗車の3人も焼死したのに、宗教観を示す旗だけ車内に焼け残ったとされたことには疑問が残ると指摘した。同広報担当は、この事件を受けてウイグル人が、とりわけ北京でさらに強い弾圧を受ける恐れがあると警告している。(c)AFP