【10月28日 AFP】「より良い生活」を求めて北朝鮮に不法入国した韓国人6人が25日、韓国側に送還された。韓国メディアが27日、報じた。

 6人の身柄は、南北軍事境界線上の板門店(Panmunjom)で韓国側に引き渡され、そのまま韓国当局に拘束された。6人に対しては逮捕状が請求されており、国家保安法違反で訴追される可能性があるという。

 6人と共に女性1人の遺体が引き渡されたが、聯合ニュース(Yonhap News)が公安筋情報として伝えたところによると、この韓国人女性は引き渡された6人のうちの男性1人の妻で、男性が自殺ほう助として絞殺したという。

 6人は27歳~67歳で、2009~12年に北朝鮮と中国の国境を流れる川に船から飛び込んだり、冬季に凍結した川面を歩いて渡るなどして南北軍事境界線を超え、北朝鮮側に不法入国していた。韓国出国前に偽名でインターネット上に北朝鮮を称える書き込みをしており、これを北朝鮮の公式メディアが紹介したことから「北朝鮮政府から厚遇を受けられると思いこんでしまった」と聯合は報じている。

 6人とも、韓国では家庭のトラブルや仕事の失敗といった問題を抱えて日雇い仕事で食いつないでいたことから、北朝鮮に行けばもっと良い生活ができると誤った希望を抱いたとみられるという。

■北朝鮮に失望

 韓国当局の事情聴取に対し6人のうちの幾人かは、北朝鮮に渡った後は各地の収監施設に拘束され尋問を受けたと供述しているという。収容所での拘束期間は最も長い人で3年9月に及んだという。

 報道によると、6人は北朝鮮での扱いに対する失望を口にし、裏切られたと感じているという。病気になっても治療も受けられず、収容された部屋を出ることも許されなかったなどと語っているという。

 1953年に朝鮮戦争(Korean War)の休戦協定が結ばれた後、北朝鮮から韓国への脱北者は2万3500人を超える。だが、逆に韓国から北朝鮮に移住する例は極めてまれだ。

 南北関係は最近、緊張の度合いが高まっており、6人の突然の送還は北朝鮮政府の融和的な意思表示ではないかとの見方もある。(c)AFP