【10月25日 AFP】欧州連合(EU)首脳会議が24日、ベルギー・ブリュッセル(Brussels)で2日間の日程で開幕した。米国が長年の同盟国に対しても情報収集活動を行っていた疑惑をめぐり緊張が高まる中、憤然とした態度を隠さないドイツとフランスに他国の首脳も足並みを揃える様子がみられた。

 今回のEU首脳会議は元々、雇用の刺激とデジタル経済を協議するために招集されたもの。しかし、米国家安全保障局(National Security AgencyNSA)による携帯電話の傍受が報じられたアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)独首相は会議出席に先立ち、「友人間のスパイ行為はあってはならない」と断じ、「パートナー間には信頼が必要で、われわれはその信頼を再構築する必要がある」と発言し、この問題が影を落とす同会議の基調を決定づけた。

 メルケル氏はその後、フランソワ・オランド(Francois Hollande)仏大統領と会談した。オランド氏は会議前にはコメントしなかったが、仏外交筋によると、米情報収集疑惑に対するEUの対応の取りまとめ方を検討したい考えだという。またイタリアのエンリコ・レッタ(Enrico Letta)首相も「真実を知りたい」と語った他、ベルギー、フィンランド、マルタなどの首脳も報道陣に対し、米国には説明責任があり、欧州は各国の市民を保護するため一致団結すべきとの考えを示した。

 EUの執行機関、欧州委員会(European Commission)は、この問題に関する「団結した立場」を呼び掛けた。また、ジョゼ・マヌエル・バローゾ(Jose Manuel Barroso)委員長も「全体主義」へ向けた動きに対する警告を発した。ビビアン・レディング(Viviane Reding)副委員長(司法・基本権・市民権担当)は「一般市民の電子メールであろうと、メルケル首相の携帯電話であろうと、データ保護は適用されなければいけない。EU首脳会議では宣言のみならず、行動を起こすべきだ」と語気を強めた。

 さらに、欧州議会のマルティン・シュルツ(Martin Schulz)議長も貿易交渉の保留を示唆。他の議員からも、テロ対策でのEUと米国の銀行間のデータ共有措置を一時差し止めるよう求める声が上がっている。

 しかしその一方で、情報収集面で米国と強いつながりを持つ英国や、スペインなどの多くの国々は、情報収集行為は各国の国益にかかわる問題であって、EU全体の責任範囲からは完全に外れるとみているため、EU首脳が実際に意見統一を図れるかどうかは不透明だ。(c)AFP/Claire ROSEMBERG