【10月24日 AFP】20日に閉幕したロンドン国際映画祭(London Film Festival)で、ミュージカル映画『メリーポピンズ(Mary Poppins)』製作の裏側を描いた『セービング・ミスター・バンクス(原題、Saving Mr Banks)』が世界初上映された。

 同作は、ハリウッドの大物プロデューサー、ウォルト・ディズニー(Walt Disney)と原作者パメラ・リンドン・トラヴァース(Pamela Lyndon Travers)氏との映画製作までの確執を描く。ディズニーを演じるのはトム・ハンクス(Tom Hanks)、トラヴァースを演じるのはエマ・トンプソン(Emma Thompson、54)だ。

 原作のメリー・ポピンズの「魔法」にかかったディズニーは、この作品をどうしても映画化したいと考える。だがトラヴァース氏は拒絶する。ハリウッドやディズニーのような甘い夢の世界に興味がなかったのだ。

「2つの文化が、1つの象徴的な作品について衝突する映画です」と、トンプソンさんは記者会見で語った。「この役を断るなんてできなかった。年相応の役を見つけられないこの年代の女性が、突然すばらしい役を手に入れたのだから」

 トンプソンが演じるトラヴァース氏は神経質な役で、自分の作品を修正したり主要な登場人物を書き直すことについて抵抗し続ける。この執着は、彼女の最愛の父親に対してささげたものだと思われている。そして、その父親から『メリーポピンズ』のキャラクター、ジョージ・バンクスのキャラクターが生まれたと言われる。

 トラヴァース氏が自分のホテルの部屋にディズニーのぬいぐるみがあふれているのを見て怒るシーンがある。彼女はミッキーマウスのぬいぐるみを部屋の隅に座らせ、こう言う。「繊細の美学がわかるまで、ここでじっとしていなさい」

 人工的な世界にいら立った彼女は、オーストラリアでの子供時代の記憶に逃げ場を求める。そこで完璧ではないが最愛の父親との感動的な親子関係が描かれる。「お前は何にでもなれるよ」と、父親が言う。するとトラヴァース氏が「お父さんみたいになりたいの」と返す。

 映画はユーモアにあふれているが、このような過去のフラッシュバックが幼くして親を失った女性の弱さや哀愁を感じさせる。

 そしてディズニーがトラヴァース氏と理解しあえるようになったのは、彼の子供時代の記憶を打ち明けたときだった。それまでに何と14年を要した。(c)AFP