【10月18日 AFP】伝説上の動物「雪男」(イエティ)の謎を解明したかもしれないと、英国の遺伝学者が17日、発表した。

 英オックスフォード大学(Oxford University)のブライアン・サイクス(Bryan Sykes)名誉教授によると、ヒマラヤ山脈(Himalayas)で採取された雪男のものとされる2体の動物の試料と古代のホッキョクグマとの間で、完全な遺伝子の一致が確認されたという。

 ヒマラヤでは「ミゴイ(Migoi)」、北米では「ビッグフット(Bigfoot)」、カフカス(Caucasus)山脈では「アルマスティ(Almasty)」としても知られる毛むくじゃらの類人猿に似た生物、雪男に関する伝説は何世紀にもわたって存在し、人類の親戚かもしれないとの臆測も呼んできた。

 だがサイクス教授によると、イエティはホッキョクグマとヒグマの雑種である可能性が高いという。ホッキョクグマとヒグマは近縁種で、生息地が重なっている地域では異種交配することが知られている。

 サイクス教授は昨年、イエティと思われる生物の目撃地で採取された試料の提供を全世界に呼び掛け、約70個の試料を入手した。このうちの27個から、優良なDNA検査結果が得られた。これらはその後、データベースに保存されている他の動物の遺伝子との比較が行われた。

 すると、体毛の試料2個から予想外の結果が得られた。1個は、インド・カシミール(Kashmiri)地方のラダック(Ladakh)で40年前に射殺された動物から採取されたもので、もう1個はブータンで10年前に発見されたものだ。

 サイクス教授はBBC(英国放送協会)のラジオ番組で「ヒマラヤ山脈で収集された試料には、普通の種類のクマや他の生物が混じっていた」と語る。「だが特に興味深い試料では、その遺伝子パターンが、ヒグマなど現代のクマではなくて、古代のホッキョクグマと関連性が確認された」

 ラダックとブータンの試料から採取したDNAは、ノルウェーのスバルバル(Svalbard)で発見された4万~12万年前のホッキョクグマの顎の骨から採取したDNAと100%一致した。

 サイクス教授は声明の中で「この結果の解釈については、さらなる研究を行う必要がある」としつつも、「この結果は、ヒマラヤ周辺をうろついている古代のホッキョクグマが存在することを意味するのではなく、ホッキョクグマの祖先の血を引くヒグマの亜種が高ヒマラヤに存在することを意味するのかもしれないと考えている」と述べている。「あるいは、最近になってヒグマと古代ホッキョクグマの子孫との間に交配が行われたことを意味するのかもしれない」

 サイクス教授は、今回の研究結果を査読科学誌で発表するための投稿を済ませており、今週末に始まる英国のテレビ番組でも発表する予定だ。(c)AFP