【10月16日 AFP】若いボノボ(ピグミーチンパンジー)は、人間の子どもと同じような方法で、仲間の気分を良くするためにハグやキスを交わしているとする論文が、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。人間と類人猿の感情が似たように機能することを示唆する研究結果だ。

 ボノボは、遺伝子的にはチンパンジーや人間に近い動物で、感情移入能力が最も高い大型類人猿とみなされている。「これにより、ボノボは心理学的比較調査の理想的な対象になっている」と、研究を率いた研究者の一人、フラン・デワール (Frans de Waal)氏は語る。「人間とボノボの基本的な類似性はおそらく、約600万年前に生息していた最後の共通の祖先に由来していたのだろう」

 米エモリー大学(Emory University)の科学者らはこの研究で、コンゴ民主共和国の首都キンシャサ(Kinshasa)近郊にある保護区域でボノボ同士の日常的な交流の様子を収めた動画を調査した。

 同大学の保健科学部から発表された声明によると、けんかに負けるといった大きな感情変化からすぐに回復したボノボほど、仲間に対して強い「思いやり」を示すことがわかったという。

 研究を率いた研究者の1人、ザナ・クレイ(Zanna Clay)氏によると、こうした感情移入能力の高いボノボは、苦しんでいる仲間に対してハグ、ボディータッチ、キスなどの「体に触れる慰め行為」を行う傾向が強いという。

 このことは、ボノボが怒りを爆発させたり失意に圧倒されたりしないように自身を制止して、激しい感情を抑えることができることを示唆している。これは人間の子どもにとっても、健全な社会性の発達を構成する重要な部分の一つだと、研究チームは指摘している。(c)AFP