【10月14日 AFP】インターネット検索最大手グーグル(Google)が提供するサービス「ストリートビュー(Street View)」は、多大な費用と時間がかかる「侵入生物種」との闘いで有用な武器になる可能性があるとの研究が前週、米オンライン科学誌プロスワン(PLOS ONE)で発表された。

 フランス国立農学研究所(INRA)の研究チームは、木を枯らす昆虫の拡散範囲を測定するために、このオンラインツールを使用した。ストリートビューでは、特殊カメラを搭載した自動車で撮影した街角の360度のパノラマ画像を見ることができる。

 オオギョウレツケムシガ(学名:Thaumetopoea pityocampa)は、木の葉を食べる生物の1種で、気候が穏やかな欧州南部の原産だが、気温の上昇と共に北部や高地に生息範囲を拡大している。

 オオギョウレツケムシガは、オーストリアクロマツと呼ばれる常緑樹の葉を好んで食べる。オーストリアクロマツは、欧州の保管林や観賞用庭園に広く植えられている。

 オオギョウレツケムシガの幼虫は秋になると、冬を越すための巣を作る。まるで毛で覆われた電球のように枝の先にぶら下がる、光沢のある白い絹糸でできた巣は非常に目立つ。

 研究チームは、この巣を証拠として使用し、オオギョウレツケムシガに侵入された区域をマッピングするために、広大なエリアをストリートビューで「走り」回った。

 オランダの国土より広い4万7000平方キロのエリアを、縦横16キロの広大な「区画」183個に格子状に区分した。巣が見つかった「区画」には「侵入済」の印を付けた。

 グーグル・ストリートビューを利用した「サイバー調査」の結果は、調査員1人が対象エリアを自動車で走り回って現地で実施した調査と比較すると、90%の精度だった。

 研究チームは、「グーグル・ストリートビューは、少なくともオオギョウレツケムシガなどの道路サンプリングを用いて容易に観測できる生物種に関しては、将来の利用について有望な可能性を有することが、今回の結果で明らかになった」と指摘している。

 今年初めにスペインの生物学者らがプロスワン誌に発表した同様の試験的研究では、スペイン北部の断崖で、2種のハゲワシが生息している可能性が高い場所をマッピングした結果、絶滅危惧種に関しても、グーグル・ストリートビューの有用性が明らかになったとしている。(c)AFP