【10月8日 AFP】景気が良ければみんな長生きするとは限らない──先進国の高齢者では景気が良くなるほど死亡率が上昇するという新たな研究結果に、調査を実施したチーム自身も驚いている。

 長期的には経済が繁栄すればすべての年代で死亡率が下がり、特に高齢者の死亡率の低下によると考えられている。しかし短期的な景気変動を見た場合、様相は違うという。

 英専門誌「Journal of Epidemiology and Community Health(疫学と地域保健)」に論文を発表したのは、活力と加齢に関する研究を行う蘭ライデン・アカデミー(Leyden Academy on Vitality and Ageing)のチーム。

 同チームは日本や米国など19の先進国について、1950~2008年の経済成長データと死亡率の関係を分析した。論文は「先進国の多くは現在不況下にあり、このことが高齢者の生存にマイナス影響を与えているという仮説を立て得た。しかし毎年の失業率増加、あるいは国内総生産(GDP)の低下と、死亡率の『低下』と関連していた」と述べている。

 調査では、国内総生産(GDP)の上昇1ポイントにつき、70~74歳の死亡率が男性では0.36%、女性では0.18%上昇していた。

 一般の認識とは相反する同様の傾向は、すでにより若い世代については知られていた。今回調査の40~45歳の死亡率では、GDP上昇1ポイントにつき男性が0.38%、女性が0.16%増えている。こうしたより若い世代については、好況時の仕事増によるストレスや雇用増による交通事故などに原因があるとされてきた。しかし、こうした要因は退職後の高齢者については当てはまらない。チームでは、高齢者の場合についてはまだ説明ができず、さらに研究が必要だとしている。

 仮説としては、好況時には若い家族親戚や友人の労働時間が長くなり、高齢者と付き合ったり世話をする時間が減るといった社会構造の変化が原因とも考え得る。また景気拡大期に増える大気汚染が、より虚弱な高齢者の健康を害するのが一因とも考え得る。(c)AFP