【10月8日 AFP】海洋の状態は、従来考えられてきたよりも急速に悪化しており、温暖化、酸性化、貧酸素化が憂慮すべき速さで進行しているとする最新の報告書が3日、海洋研究国際計画(International Programme on the State of the OceanIPSO)などから発表された。

 IPSOと国際自然保護連合(International Union for the Conservation of NatureIUCN)が発表した報告書は、海洋の温暖化、酸性化、貧酸素化という「死のトリオ」に警鐘を鳴らしており、「海洋の生産性と効率性に深刻な影響を及ぼしているのは、『死のトリオ』の同時発生だ」と述べている。

■増え続けるCO2排出は年間約30ギガトン

 報告書によると、人間が石油や石炭を燃やして排出を続けている二酸化炭素(CO2)の約3分の1は海に吸収されるが、現在のCO2排出速度は年間約30ギガトン(300億トン)で、約5500万年前に先の大規模な種の絶滅があった時の排出速度に比べて、少なくとも10倍は速くなっているという。さらに、海洋酸性化も、少なくとも過去3億年で類を見ない水準で進行しているという。

 報告書の発表の1週間前、国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate ChangeIPCC)」は、温室効果ガスの排出によって地球の大気に蓄えられる熱の90%以上を海が吸収していると発表した。

 さらに報告書は、平均の海洋上部の温度は、過去100年間で0.6度上昇したと伝えている。温暖化がさらに進むと、夏季の北極海氷の消滅、酸素欠乏の進行、北極圏の海底に閉じ込められている地球温暖化メタンガスの放出などを引き起こす可能性が高くなる。

■海水の酸素量は減少

 海水中の溶存酸素量の急速な減少について、予測では、地球温暖化と農業肥料や汚水による海への栄養流出の影響が原因で、2100年までに1~7%減少する、と警告している。

 海水の酸素濃度が変化し、「デッドゾーン」と呼ばれる酸欠水域が増え、サンゴ礁が死滅すると「多くの生物が、生きていくのにふさわしくない環境に置かれる」ことになる。魚の乱獲や環境汚染などの人間の活動で損害を受けている海洋生態系では、これらすべてがすでに起きていることだと報告書は指摘する。

 気温の上昇を産業革命以前の水準と比べて2.0度以内に抑えるために、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出を削減する緊急の対応をすべきと報告書の著者らは提案している。2.0度はUNの目標数値だが、これまで以上に手が届かなくなっていると思われる。

 さらに著者らは、乱獲を後押しする有害な漁業補助金の撤廃や、海底とそこに生息する生物を無差別に損なう底引き網漁などの破壊的な漁業の禁止を呼び掛けている。

 地表面積の4分の3近くを占める海洋は、われわれが呼吸する酸素の約半分を供給し、毎年数十億人分の食糧を賄っている。

 報告書は「われわれは生物を、耐え難い進化的圧力にさらしている、次の(生物種の)大量絶滅事象は、すでに始まっているのかもしれない」と述べている。(c)AFP/Mariette LE ROUX