【10月2日 AFP】地球温暖化による北極の氷の融解が原因で、グリーンランド西部に生息するカリブー(トナカイの仲間)に予想外の影響が及んでいるとの調査結果をまとめた論文が1日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。生まれる子の数が減少し、子が生後に死ぬ割合も増加しているという。

 論文によると、氷の融解が加速したことが原因で、グリーンランドで植物が育ち始める時期がかつてないほど早まっている。2011年は、2002年と比較すると平均で約16日も早かったという。

 だがカリブーが子を産む時期は以前と変わらないため、新しく生まれた子と母親が、以前に比べて栄養のピークを過ぎた草を食べなければならなくなった。

 グリーンランドに生息するカリブーは、枝角を持つ大型のシカに似た動物で、繁殖シーズンを控えた5月下旬から6月上旬にかけて、若い植物を探し求めて西から東へ移動する習性を、約3000年間にわたって繰り返してきた。この時期にみずみずしい若い植物を食べることで、健康な子が生まれる可能性が高くなる。

 現在進行中の海氷の減少は、北極圏の多くの地域での陸地温度の上昇と関連づけられている。論文によると、植物は成長の時期を調整することで、気温の上昇に対応している。だがカリブーは、繁殖周期が気温ではなく日照時間の季節変化によって決まるため、春のほぼ同時期に子を産むことを続けている。

 今回の調査に参加した米ペンシルベニア州立大学(Pennsylvania State University)の大学院生、ジェフリー・カービー(Jeffrey Kerby)さんは「私たちはこのシナリオを『栄養の不一致』と呼んでいる。これは、植物が最も栄養豊富になる時期と、動物が栄養摂取のために植物に最も依存する時期とが食い違うことです」と述べている。(c)AFP