【10月2日 AFP】マウスから採取した幹細胞を使い、唾液腺と涙腺を作製することに成功したとする研究論文が1日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。移植用臓器を培養する試みに、さらなる前進をもたらす成果だ。

 東京理科大学(Tokyo University of Science)の辻孝(Takashi Tsuji)教授率いる研究チームによると、今回の研究成果は、世界中で数千万人の患者がいる「角膜乾燥症(ドライアイ)」や「口腔(こうくう)乾燥症(ドライマウス)」といった症状を引き起こす分泌腺の機能不全の治療に役立つ可能性があるという。

 研究チームは、実験室の培養皿で前駆細胞から唾液腺と涙腺を培養し、未発達の状態でマウスに移植した。移植された唾液腺と涙腺はどちらも周囲組織と順調に接合し、導管と神経線維に接続したという。

 移植された涙腺は涙を分泌し、唾液腺は食物の刺激に対して正常な反応を示して口腔感染からマウスを守った。これらの分泌腺は、マウスでは1年6か月の長期にわたり機能させることに成功したと、チームは付け加えている。

 まぶたを涙で潤わせることができないドライアイは、視力低下の一因となる。論文によると、唾液の不足により嚥下(えんげ)障害や口腔感染症などの問題を引き起こすドライマウスの患者数は数百万人に上るという。

 ただ辻教授の研究チームは、この方法で作製した分泌腺が実用可能になるには、解決しなければならない問題がいくつかあると注意を促し、作製に適した幹細胞を多く確保する必要性を指摘している。(c)AFP