【9月29日 AFP】米国家安全保障局(National Security AgencyNSA)は、過去10年間に一部職員が恋人や配偶者の電話を違法に盗聴していたことを認めた。こうした盗聴は冗談交じりに、愛の「love」と情報活動の「intelligence」の2語を合わせて「ラビント(loveint)」と呼ばれているという。

 NSAのジョージ・エラード(George Ellard)査察官は、職員が私生活について監視技術を乱用していると伝えた一部報道を確認。チャック・グラスリー(Chuck Grassley)米上院議員に宛てた9月11日付の書簡で、職員による盗聴の詳細を開示した。

 エラード査察官の書簡は、通信や信号を媒介とした諜報活動「シギント(SIGINT)」が故意に乱用されたと立証された事例が2003年以降12件あるとしている。シギントは国外の犯罪容疑者の通話記録を調べたり、通信を傍受したりする情報収集活動のこと。NSA査察官事務所は、これまで2件の事例について公開調査を実施し、現在は乱用が疑われる事例1件について調査するか検討中とされる。

■続々と不祥事

 書簡で開示されている事例を見ると、不適切な盗聴を行ったNSA職員は処分を受ける前に退職し、政府当局も訴追しなかったケースが多い。一例を挙げると、04年にNSAのある女性職員は夫の浮気を疑い、夫の携帯電話から見つかった海外の電話番号の通信を傍受。この職員は処分を受ける前にNSAを辞めた。

 11年には、自宅と恋人の外国人女性の電話番号について通信記録を調べようとした職員がいた。NSAは裁判所命令がない限り米国民に対する通信記録の調査を禁じているため、自宅の電話番号に関する調査申請は却下されたものの、恋人の電話番号については情報収集に成功。調べを受けた職員は「好奇心から」やってしまったと説明し、何の処分も受けないまま12年に退職した。

 別の事例では、NSA職員の外国人女性が同僚に対し、局内にいる恋人が自分の電話を盗聴している疑いがあると打ち明けた。同僚が査察官事務所に通報した結果、恋人が渡航中に「正当な外国情報収集の目的なく」外国人女性9人の電話を盗聴していたことが判明。恋人は停職となり、処分を言い渡される前に退局した。11年には、女性職員が恋人を含む外国人数人の電話を盗聴していたことを認める事例もあった。

 各人権団体は一連の不祥事を、米政府の監視プログラムがプライバシーの権利を脅かしており、これを厳格な管理下に置く必要があることを示す新たな証拠と指摘するとみられる。(c)AFP