【9月26日 AFP】あごと背骨を持つあらゆる動物の祖先は、すらっとしたサメのような魚ではなく、骨板に覆われた歯のない魚だった──。ヒトの進化に関する従来説を覆すこのような論文が、25日に英科学誌ネイチャー(Nature)で発表された。

 硬い骨を持つ現生動物(硬骨魚綱)の祖先をめぐっては長年、軟骨でできた骨格を持つサメのような生物から進化したとの説が主流だった。だが研究チームは、中国で発見された4億1900万年前の魚類の化石が、この通説を覆すものだと述べている。

 硬骨魚綱には、現存魚類の大半や、ヒトなどの四肢を持つ陸上動物が含まれる。これまでは、硬骨魚綱の姉妹群を成すサメやエイなど現代の軟骨魚類が、これら2分類の動物へと進化した、あごを持つ祖先に最も近いと考えられていた。つまり、われわれ硬骨魚綱は現在の骨格をゼロから進化させた一方で、サメやエイ、ギンザメなどは祖先から受け継いだ軟骨から成る骨格を持ち続けた、という説だ。

 しかし今回新たに発見された原始の魚は、小さな頭蓋骨とあご骨を含む複雑な骨格を持っており、進化系統樹に欠けていた部分を埋めるものであると同時に、硬い骨から成る骨格がすべての脊椎動物の原型だったことを示すものだという。

 研究に参加した中国科学院・古脊椎動物古人類研究所(Institute of Vertebrate Palaeontology and Palaeoanthropoloy)のブライアン・チュー(Brian Choo)氏は、「(化石が)示唆することは明確だ。硬骨魚綱は独自に硬い骨を獲得したのではなく、単に(祖先から)それを受け継いだのだ」と述べている。その祖先とは板皮(ばんぴ)類と呼ばれる骨板に覆われた魚類で、有顎脊椎動物の中でも最も原始的な部類とされている。「硬骨魚綱は、骨板に覆われていないサメのような時期を経た後に骨を獲得したのではなく、単に自分たちの祖先から直接骨板を受け継いだのだ」とチュー氏は語った。

 つまり研究チームによれば、サメやエイは脊椎動物の原型だったわけではなく、共通の祖先が持っていた骨板を、進化の過程で捨てたということになる。

 中国南部・雲南(Yunnan)省曲靖(Qujing)でほぼ完全な化石として発見され、「Entelognathus primordialis」と命名された魚類は、約4億2300万~4億1600万年前のシルル紀後期に中国周辺の海に生息していた板皮類だという。奇妙な姿をした体の長さは約20センチで、頭と胴体は骨板でしっかり守られ、尾びれはうろこに覆われていた。顎はあるが歯はなく、骨ばった頭部の眼窩(がんか)は大きいが、そこに収まっていた眼球は小さかったものとみられている。(c)AFP/Mariette LE ROUX