【9月21日 AFP】トルコとの国境沿いにあるシリア北部アレッポ(Aleppo)県の町、アザズ(Azaz)で18日に戦闘になったシリア反体制派「自由シリア軍(Free Syrian ArmyFSA)」と国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系武装勢力「イラク・レバントのイスラム国(Islamic State of Iraq and the LevantISIS)」が停戦に合意したと、イギリスを拠点とするNGO「シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)」が20日、明らかにした。

 ISISは18日にFSA部隊との数時間にわたる戦闘の末、アザズを占拠した。FSAが2012年7月に政府軍から最初に奪った町の1つであるアザズは象徴的、戦略的価値が高く、FSAはこの町に独自の行政組織を作っていた。

 シリア人権監視団によると、アザズで活動するFSA傘下の武装組織「北部の嵐(Northern Storm)」もISISとの間で、互いに攻撃を停止することを条件に停戦に合意した。各派は、18日の交戦で拘束した人員を解放すること、略奪した物品を返還すること、今後問題が発生した場合は調停委員会に諮ることでも合意したという。

 シリアの反体制各派は、安定的な兵器の供給を受けて支配地域を拡大し「政府軍に匹敵する」ともされる残忍さを示すISISに怒りを募らせており、ここ数か月、反体制派がその大半を支配下に置いているシリア北部を中心に反体制各派とISISの間で緊張が高まっていた。

 一方でISISは、FSAの最高軍事司令部傘下の一部の反体制勢力を、欧米と協調する「異教徒」だと糾弾していた。こうした中、反体制派の統一組織「シリア国民連合(Syrian National Coalition)」は20日、「FSAの戦闘員に銃を向けたことはシリアの革命とそれが達成しようとする理念に反する行為だ」として、異例のISIS批判に踏み切った。

■反体制派のジレンマ

 シリア国民連合は声明で、シリアの革命勢力への攻撃とシリア国民の生命を軽視した行動が繰り返されていることを非難し、ISISは「この数か月、市民や医師、ジャーナリスト、政治活動家らを抑圧する行動を繰り返してきた」、「外国の策略に関与している」、「シリアの主権を侵害してシリア国内に新たな国家を作ろうとしている」などと批判した。

 反体制各派とFSAにとって、ISISとアルカイダ系イスラム武装組織「アルヌスラ戦線(Al-Nusra Front)」は以前からジレンマの原因になっていた。

 実戦の中でISISとアルヌスラ戦線が政府軍に対する有効な戦力であることは証明されていた。そしてFSA上層部は両者と戦術的に協力する用意があった。

 しかし、欧米諸国はシリア国内の戦場にISISとアルヌスラ戦線が存在することを理由に反体制派への支援を、殺傷力を伴わないものにとどめてきた。反体制派に提供した武器がイスラム過激派の手に渡ることを恐れたためだ。

 フランスのフランソワ・オランド(Francois Hollande)大統領は19日、「管理された環境下で」、「多数の国が同時にこれを行う」場合に限りFSAへの武器供与を支持すると明言した。米国も反体制派に提供した武器がアルカイダ系組織の手に渡る懸念を繰り返し表明している。(c)AFP