【9月19日 AFP】貧困や病気についての風評に悩まされる一方で、経済が上向く兆しもある。スコットランド最大の都市グラスゴー(Glasgow)はこうした対照的な要素を併せ持つ。英国の分裂に関する意見でも同様だ。

 イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドから構成される英国からの独立の是非を問う歴史的な住民投票が行われる2014年9月18日まであと1年。300年続くイングランドとの連合から分離するかどうか。賛成票を投じることはスコットランドの住民530万人にとって重大な決断だ。

 グラスゴーの貧困地区、カルトン(Calton)の落ちぶれた感じの店やシャッターが閉められたパブが並ぶ商店街。ブライアン・ライリー(Brian Reilly)さん(54)は雨の中、かつて営んでいた宝石店を眺めながらこう話した。「このありさまだ。独立したって何も変わらないよ。金がない。ジャンキー(麻薬中毒者)があちこちいる。政治家はこの地区のために何もしていない」。ライリーさんは2月に店を閉じることを余儀なくされた。

 かつて造船業、鉄鋼業などの重工業で栄えたグラスゴーだが、アルコール依存に薬物乱用、地域的なひどい貧困がまん延している。今月発表された公式統計によると、グラスゴーでは3分の1の世帯が完全な失業状態にあり、英国の中でも失業率が著しく高い地区だという。

 一方、グラスゴー再建に向けてここ20年間で多額の投資がなされた。14年には英連邦競技大会(コモンウェルス・ゲームズ、Commonwealth Games)がグラスゴーで開催される。

■現時点で独立に賛成する人は3分の1ほど

 グラスゴーは英語圏で最も古い大学の1つがある街でもある。新学期が始まって間もない17日、市内にたくさんの姿がみられた学生たちは、1年後に実施される住民投票についてしっかりとした意見を持っていた。

 政治学を学んでいるマリア・ユーラ(Maria Ure)さんはAFPに、「反対票を投じる」と話した。ユーラさんは「英国から分離したらどうなるのかはっきりしていない問題が山積している。スコットランド独自の軍を持つのか、国連(UN)や北大西洋条約機構(NATO)には加盟するのかなど」と述べた。

 寒いにもかかわらずサングラスをかけ、大学前で地元のゲイクラブのイベントのチラシを配っていたショーン・ギャラハー(Shaun Gallacher)さんは「歴史上、最悪の独立になると思う。収拾がつかない事態になる。スコットランドは英国の一部でいた方が国際舞台でより良いチャンスに恵まれると思う。発言力を持たないちっちゃな国にはなりたくない」と話した。一方、賛成票を投じるというギャラハーさんの友人、ジョディ・マッケナ(Jodie McKenna)さんは「スコットランドはそれ自体でもっと価値がある」と述べた。

 世論調査によると、現時点で賛成票を投じる意向のスコットランド人は全体の3分の1ほどにとどまっている。

 スコットランド民族党(Scottish National PartySNP)のアレックス・サモンド(Alex Salmond)党首は、1年あれば経済的・政治的議論で独立支持派を過半数まで増やすのに十分だと主張する。サモンド党首は、独立後は北海(North Sea)の石油資源で豊かになるだけでなく、スコットランドの伝統的な左派に訴えかけるような平等主義の拡大を実現すると約束している。(c)AFP/Katy Lee